「本好きへの100の質問」

はてブを見ていたら「本好きへの百の質問に答えてみました。:Black Life. Non Sugar.」というのを見つけまして、こういう「100の質問」のたぐいってあんまり好きではないのだけれど、これはとても面白かったのでマネしてみました。元のページはこれ→本好きへの100の質問

001. 本が好きな理由を教えてください。
……なんでだろう。便利だから?
002. 記憶に残っているなかで、最も幼い頃に読んだ本は?
覚えてない……「よいこ」とか「めばえ」みたいな幼児雑誌だと思う。自分で字が読めるようになってからは、小学館かどこかの名作全集みたいなのを読んだのを覚えている。「カロリーヌのせかいのたび (オールカラー版世界の童話 23)」ていうのがあったなー。
003. はじめて自分のお小遣いで買った本を教えてください。また、その本を今でも持っていますか?
覚えてない……中学の時までは読みたい本は買ってもらってたので……本を捨てたり売ったりする習慣はないので、実家のどこかにあると思います。
004. 購読している雑誌はありますか?
雑誌買わなくなっちゃった。
005. 贔屓にしているWEBマガジンはありますか?
ありません。
006. 書籍関連のHPの、どんなところに注目しますか(書評や感想文等々)。
自分が読んだ本の評判が知りたくて「読書メーター」とか「ブクログ」とかを見に行くことはあります。
007. 最近読んだ本のタイトルを教えてください。
津島佑子山を走る女
008. ベストセラーは読む方ですか?
あまり読みません。
009. 御贔屓は、どんなジャンルですか?
小説、マンガ、(ジャンルじゃないけど)新書。
010. あなたは活字中毒ですか?(それはどんな症状としてあらわれていますか)
ちがうと思う。
011. 月に何冊くらい読みますか?
最近まとまって読む時間がとれなくなってしまったので、読めてせいぜい4〜5冊。
012. あなたは本の奥付をちゃんとチェックしますか? するとしたら、その理由は?
します。発行年月日や何刷りか確認しないと落ち着かないから。
013. 文庫本の値段として「高い」と感じるのは幾らからですか?
ページ数による。
014. 本は書店で買いますか、それとも図書館で借りますか。その理由は?
最近はもっぱら図書館に頼っています。お金と置き場所がもうないので。
015. あなたは「たくさん本を買うけど積ん読派」それとも「買った本はみんな目を通す派」のどちらでしょう?
今は「あまり買わなくて未読の本がまだ大量に積んである」派。
016. 行き場に困ったとき、とりあえず書店に入ってしまう。そんなことはありますか?
あんまりありません。よその本屋に入るとなんだかいらいらすることが多いので……(めんどくさいやつ)
017. 馴染みの書店・図書館に、なにかひとこと。
世田谷区立図書館さまいつもお世話になっております。で、ものは相談なのですが、一度に借りられる冊数が杉並区は15冊、目黒区は20冊なのです。世田谷区(5冊!)もなんとかなりませんかね?
018. あなたは蔵書をどれくらい持っていますか。
いま本棚の前に行っておおざっぱに数えてみたら、だいたい1000冊くらいはあるような感じだった。

こんなかんじ。*1
019. 自分の本棚について、簡単に説明してください(“小説が多く実用書が少ない”等々)。
文庫が多い。
020. 本棚は整理整頓されていますか。
震災の時に倒れて中身が飛び出したのをずっと仮詰めしてあったんですけど、先日やっと重い腰を上げて整理しました。
021. 既に持っている本を、誤って買ってしまったことはありますか? その本のタイトルは。
誤ったわけではないんですけど(実家に持っているのが必要になって新しく買ったとか、ヨメさんに結婚前に薦めて買わせて結果的にダブってしまったとか)『ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)』、カフカ審判 (新潮文庫)』、『千利休―無言の前衛 (岩波新書)』等々
022. 気に入った本は、自分の手元に置かないと気が済まない?
どちらかと言えばそうです。
023. 本に関することで、悩んでいることは?
もう置き場所がない。
024. 速読派と熟読派、あなたはどちらに該当しますか。
速読はできないけど熟読もできてないと思う。
025. 本を読んでいて分からない言葉があったとき、意味を調べますか?
その言葉の正確な意味がわからないと先に進めない時以外は、調べないで適当に見当つけてそのまま読み進める。
026. 本を読む場所で、お気に入りなのは?
ふとんの中。
027. あなたは今、めったに読むことのない分厚い本を前にしています。ところでこの本「すごくおもしろい」という、いつもは信頼できる情報を得たはずなのに、最初の部分がやたらにつまらない。そんなときどうしますか?
本の種類によると思いますが、小説だとしたら「今は読む時期でない」と判断して読むのをやめると思う。
028. 本を読むときに、同時になにかすることはありますか?(例:お茶を飲む、おやつを食べる、音楽をかける)
とくになし。
029. 読みかけの本にはさむ栞は、何を使っていますか?
そこらへんにあるカミ
030. ブックフェアのグッズを新たに誕生させることになりました。あなたが「これなら欲しい」と思うグッズを考えてください。
べつにない。ていうかブックフェアって何?
031. 無人島1冊だけ本を持っていけるとしたら、何を選びますか。
月並ですが読もうと思っててなかなか読めないので『聖書』。
032. 今、最も欲しい本のタイトルをどうぞ。
吉田秋生海街diary』2巻以降(こないだ1巻買ったので)
033. 生涯の1冊、そんな存在の本はありますか? その本のタイトルは。
四方田犬彦クリティック (1984年)
034. 何度も読み返してしまうような本はありますか? その本のタイトルは。
蓮實重彦反=日本語論 (ちくま学芸文庫)
035. おきにいりの作家ベスト5と、理由をお願いします。
大江健三郎 戦後の日本で最も重要な作家だから
津島佑子 戦後の日本で最も重要な女性作家だから
四方田犬彦 アカデミシャンとしての訓練がありながらジャーナリスティックな才覚に長けているから
赤瀬川原平 自分の芸術の概念を拡張してくれた人だから
ポール・オースター この人ノーベル賞とってもいいと思うんだけどなー
あのー、理由はぜんぶ後付けで、ようは「読んで面白いから」ですよ
036. 好きなシリーズ物はありますか?
紀州サーガ」(中上健次
037. 本を選ぶときのポイントを教えてください。
買う本ということなら、作り手が愛を持って作ったことが伝わってくる本
038. 翻訳小説は、訳者にこだわる方ですか。
こだわるというのは「ライ麦畑」を読むのに村上訳でなく野崎孝を選ぶとかそういうことでしょうか?……基本的に新しい訳のほうがいいとは思いますけど……
039. 信頼できる書評家は誰ですか?
斎藤美奈子(信頼というか趣味があうので)
040. 絵本は好きですか? 好きな方は、好きな絵本のタイトルを教えてください。
好きな絵本と嫌いな絵本がありますが……(あたりまえ)。子どもの頃から繰り返し読んだのは斎藤隆介滝平二郎八郎 (日本傑作絵本シリーズ)』とか
041. 本は内容を先に読む方ですか、それとも、あとがきから読む方ですか?
序文・あとがき・オビのコピー・裏表紙の紹介文など周辺情報をぜんぶさらってから、おもむろに本文にとりかかります。
042. 読みたいのに読めない本はありますか? その理由は。
本というか、赤瀬川原平・熊瀬川紀『ルーヴル美術館の楽しみ方 (とんぼの本)』のなかにすごくキモチワルイ絵があって、それ見て以来その本が開けなくなってしまった(弱)
043. ノンフィクション作品のおすすめを教えてください。
このテの「おすすめ」って、どういう人にどういう意図でおすすめすればいいのか全く不明なので答えづらいのですけど、石原千秋秘伝 中学入試国語読解法 (新潮選書)』は育児書であり教育書であり文学論でもある本で、オトクだなあとおもいます
044. あなたの好きな恋愛小説を教えてください。
村上春樹ノルウェイの森(上)』(こなみ
045. 泣けてしまった本を教えてください。
いせひでこ新編 マキちゃんのえにっき
046. 読んでいるだけで、アドレナリンが分泌されてくるような本は?
アドレナリンというのとは違う気がするけど、浅田彰構造と力―記号論を超えて』は「よくわかんないけど読んでると元気になる」(流行っていた当時のある女子高生の感想)に禿同。
047. もう2度と読みたくない本は、ありますか?
あるはずなんですけど、思い出せません(怖)
048. 良くも悪くも「やられた!」と思った本はありますか?
「やられた!」で思いつくのは映画の『シックス・センス』なんですけど、本でそういうのってあんまりないなー。目ウロコ本はいっぱいあるんですがね。
049. 読む前と読後感が違っていた(食わず嫌いだった)本は?
みなもと太郎風雲児たち (1) (SPコミックス)』。
050. 子供にプレゼントしたい本のタイトルを教えてください。
みなもと太郎風雲児たち (1) (SPコミックス)』。
051. お気に入りの出版社と、その理由を教えてください。
新潮社。本気で文学を支えていこうとしているのがわかるから。
052. それでは苦手な出版社は? その理由を教えてください。
幻冬舎。書籍を雑誌みたいに売ることでヒットをいくつも出しましたが、結果的にそれが現在の業界の凋落を生む一因になっていると思う。
053. この本で読書感想文を書いた、という記憶に残っている本はありますか? あれば、そのタイトルは?
ニコライ・ニコラエヴィチ・ノーソフ『ヴィーチャと学校友だち (岩波少年文庫 (2034))』。「推薦図書というシールが貼ってあったのでつまらないだろうと思ったら案外面白かった」という内容の感想文を書いたおぼえがある。
054. 装丁が気に入っている本を教えてください。
川上あかね『わたしのオックスフォード』(晶文社)と『ケンブリッジの贈り物』(新潮社)は、版元が違うのにカバーイラストに同じ人(杉田比呂美)を起用していてエライと思った。
055. あなたは漫画が好きですか?
人並みに。
056. お気にいりの漫画家ベスト5と、好きな作品について教えてください。
高橋葉介『ヨウスケの奇妙な世界』
手塚治虫きりひと讃歌 (1) (小学館文庫)
ゆうきまさみ究極超人あ~る (1) (小学館文庫)
よしながふみ愛すべき娘たち (Jets comics)
志村貴子敷居の住人 新装版 1 (ビームコミックス)
057. サイン本を持っていますか?(タイトルと作家名は?)
大江健三郎あいまいな日本の私―Japan,the ambiguous,and myself
四方田犬彦文学的記憶 (五柳叢書 (37))
どっちももらったものです(別にほしがったわけではない)。
058. 持っているのを自慢したい。そんな本はありますか?
別冊宝島「映画宝島 vol.2 怪獣学・入門!」の初版第1刷。「『幻の12話』を20年間追い続けた男」というコラムが、2刷以降は抗議のため差し替えられてしまっているのです。あと本じゃないけど、大江健三郎「政治少年死す」と深沢七郎「風流夢譚」のコピー。
059. 東・西・南・北……漢字を選んで、浮かんだ本のタイトルを書いてください(実在する書名に限ります)。
え……『エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫)』『国境の南、太陽の西』『縛られた巨人―南方熊楠の生涯』『特車隊、北へ!』(何)
060. 短編小説集を買ったら、全部読みますか? それとも、その中から気に入った作品しか読みませんか?
あのー、気にいるかどうかはいっぺん全部読んでみないとわかんないんじゃないでしょうか。
061. 憧れのキャラクターを教えてください。
憧れねえ……『ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)』の「僕」
062. 印象的な女性キャラクターを教えてください。
ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)』のユキ
063. 印象的な男性キャラクターを教えてください。
ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)』の、サンドウィッチを作るのが得意な片腕の男(だんだんめんどくさくなってきた)
064. 先生といえば?
三四郎 (岩波文庫)』の広田先生
065. 探偵といえば?
ポール・オースターシティ・オヴ・グラス (角川文庫)』の主人公
066. ベストカップル、ベストコンビといえば?
大江健三郎同時代ゲーム (1979年)』のアポ爺とペリ爺
067. 本に登場する場所で、行ってみたいと思うのは?
アシモフ銀河帝国の興亡 1 (創元推理文庫 604-1)』のトランター。
068. 子供の出てくる作品といえば?
松田道雄最新 育児の百科
069. 動物の出てくる作品といえば?
須藤真澄長い長いさんぽ (ビームコミックス)
070. これまで出会った中で、もっとも感情移入できたキャラクターは?
大江健三郎『セヴンティーン』の主人公(危ないなあもう)
071. 本の登場人物になれるとしたら、誰(何)になりたいですか?
マハーバーラタ』のアムバ(あ、女だ)
072. 夢中になった作家、現在進行形で夢中な作家の名前を教えてください。
ここまで名前のあがっていない人だと谷崎潤一郎北杜夫筒井康隆前田愛、バラード、ディック、イーガン、ジョナサン・キャロルなど。
073. 1日だけ作家になれるとしたら、誰になりますか。
なれないし、なりたくない。
074. 編集者になるとしたら、どの作家の担当になりたいですか?
なれないし、なりたくない。
075. 好きな作家に原稿を依頼するとしたら、どんな作品を希望しますか。作家名とジャンルを教えてください。
四方田犬彦に「蓮實重彦論」を書いてほしい。
076.「あの作家に、これだけは言いたい」……ひとことどうぞ!
大江さんに「『政治少年死す』出しちゃいましょうよ」
077. 紙幣の肖像、私ならこの文豪を選ぶ!
漱石を復活させよう。
078. 文章と作家のイメージが違っていた、そんなことはありますか? 
この質問は梶井基次郎一択では
079. あなたにとって、詩人といえば。
「自分を語ることがそのまま世界を語ることになる者、それが詩人というものだ」だったっけ
080. 家族……この単語から連想した本のタイトルを書いてください(実在する書名に限ります)。
円地文子食卓のない家 (新潮文庫)
081. 本を捨てることに抵抗がありますか?
ちょっとだけあります。
082. これだけは許せない、そういう本の扱い方はありますか?
地べたにじかに置くこと……書店員時代たびたびやってしまって、反省しております。
083.“活字離れ”について、どう思いますか?
手垢のつきすぎたクリシェだなあと思う。
084. 本を読まない人のことを、どう思いますか?
とくに何も。
085. とりあえず、本を持っていないと落ち着かない。そんな癖がありますか?
昔ほどではないけどちょっとあります。
086. 世界中で、本の出版が禁止されたら、どうしますか?
んな、どうするったって……
087. 青空文庫を利用したことがありますか?
しばしば
088. 電子図書館についてどう思いますか?
よく知らないのでわかりません。
089. 将来的に、本という存在は無くなると思いますか?
思いません。
090. 本が無くても生きていけると思いますか?
思います。
091. この人の薦める本なら読んでみたい、そう思う有名人を教えてください。
誰に薦められるか、ではなくどのように薦められるか、ではないでしょうか(めんどくさい奴ですいません)
092. 映像化してほしい本はありますか?
宮崎駿シュナの旅 (アニメージュ文庫)』あのまま映画にすればいいのにね。
093. テレビ化・映画化で成功したと思う作品を教えてください。
市川崑の『細雪』、試写のとき谷崎松子氏(台詞校訂を担当)が涙で見られなくなって、途中で席を立ってしまったそうで
094. 本の中に再現したいと思う(実際に再現した)場面はありますか?
「本の内容を現実化する」という意味なら思いつくのはレシピ集ですが、「新春すてきな奥さん」1996年版の別冊付録「小林カツ代の366日おかず計画」には感謝してもしきれないほどお世話になっております。
095. あなたにはどうしても読みたい本があります。その本は既に絶版・品切。さあ、どうしますか?
とりあえずアマゾンのマーケットプレイスとカリールを検索しますけど……
096. 本という存在に対して、文句はありますか?
質問の意味(意図)がわかりません(めんどくさくてすいませんね)
097. 心に残っている言葉・名台詞は?(原典も明記してください)
優雅な生活が最高の復讐である (新潮文庫)」←この題名そのまま
「およそ語りうることは明らかに語りうる」(ウィトゲンシュタイン論理哲学論考 (岩波文庫)』、これの後段の部分はそれほど切実でない)
098. あなたにとって、本とおなじくらい蠱惑的なものは何ですか。
睡眠
099. 出版業界にひとことどうぞ。
大手は社員の給料が高すぎるんじゃないかと思うんですけど、よくわかりません。
100. つまるところ、あなたにとって本とは。
本は、本ですよ(かさねがさねめんどくさくてスマン)

途中から投げやりになってしまって、申し訳ないです。リンク元の人にくらべると、やっぱり圧倒的に日本文学のヒトなのね私(中退だけど)。

*1:2015年12月に写真を追加しました

「科学者・作家・映画監督が選ぶSF映画ベスト100」

科学者や作家、映画監督が選んだ「SF映画ベスト100」 : 映画ニュース - 映画.com」という記事があって、なんの意地悪なのか30位までしか載ってないので、元サイト(http://www.timeout.com/london/film/the-100-best-sci-fi-movies)を見て100本並べてみた。リンクはallcinema.onlineの解説のページ。日本公開されたものは「」で、未公開のものは『』でくくってあります(なつかしの「スクリーン」誌記法*1)。

1 「2001年宇宙の旅」(スタンリー・キューブリック、1968)
2 「ブレードランナー」(リドリー・スコット、1982)
3 「エイリアン」(リドリー・スコット、1979)
4 「未知との遭遇」(スティーヴン・スピルバーグ、1977)
5 「エイリアン2」(ジェームズ・キャメロン、1986)
6 「スター・ウォーズ」(ジョージ・ルーカス、1977)
7 「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム、1985)
8 「メトロポリス」(フリッツ・ラング、1927)
9 「ターミネーター」(ジェームズ・キャメロン1984
10 「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(アーヴィン・カーシュナー、1980)
11 「E.T.」(スティーヴン・スピルバーグ、1982)
12 「遊星からの物体X」(ジョン・カーペンター、1982)
13 「マトリックス」(アンディ・ウォシャウスキー+ラリー・ウォシャウスキー、1999)
14 「月に囚われた男」(ダンカン・ジョーンズ、2009)
15 「ストーカー」(アンドレイ・タルコフスキー、1979)
16 「ターミネーター2」(ジェームズ・キャメロン、1991)
17 「惑星ソラリス」(アンドレイ・タルコフスキー、1972)
18 「トゥモロー・ワールド」(アルフォンソ・キュアロン、2006)
19 「ザ・フライ」(デヴィッド・クローネンバーグ、1986)
20 「禁断の惑星」(フレッド・マクロード・ウィルコックス、1956)
21 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(ロバート・ゼメキス、1985)
22 「エターナル・サンシャイン」(ミシェル・ゴンドリー、2004)
23 「A.I.」(スティーヴン・スピルバーグ、2001)
24 「12モンキーズ」(テリー・ギリアム、1995)
25 「ロボコップ」(ポール・ヴァーホーヴェン、1987)
26 『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(ドン・シーゲル、1956)
27 「時計じかけのオレンジ」(スタンリー・キューブリック、1971)
28 「ラ・ジュテ」(クリス・マルケル、1962)
29 「猿の惑星」(フランクリン・J・シャフナー、1968)
30 「ジュラシック・パーク」(スティーヴン・スピルバーグ、1993)
31 「地球の静止する日」(ロバート・ワイズ、1951)
32 「ガタカ」(アンドリュー・ニコル、1997)
33 「サイレント・ランニング」(ダグラス・トランブル、1972)
34 「ギャラクシー・クエスト」(ディーン・パリソット、1999)
35 「地球に落ちて来た男」(ニコラス・ローグ、1976)
36 「インセプション」(クリストファー・ノーラン、2010)
37 「プライマー」(シェーン・カルース、2004)
38 「SF/ボディ・スナッチャー」(フィリップ・カウフマン、1978)
39 「ダーク・スター」(ジョン・カーペンター、1974)
40 「ウォーリー」(アンドリュー・スタントン、2008)
41 「ゼイリブ」(ジョン・カーペンター、1988)
42 「フィフス・エレメント」(リュック・ベッソン、1997)
43 「トータル・リコール」(ポール・ヴァーホーヴェン、1990)
44 「スター・トレック2/カーンの逆襲」(ニコラス・メイヤー、1982)
45 「第9地区」(ニール・ブロムカンプ、2009)
46 「her/世界でひとつの彼女」(スパイク・ジョーンズ、2013)
47 「コンタクト」(ロバート・ゼメキス、1997)
48 「ゴーストバスターズ」(アイヴァン・ライトマン1984
49 「スターシップ・トゥルーパーズ」(ポール・ヴァーホーヴェン、1997)
50 「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」(ジョナサン・グレイザー、2013、2014年10月日本公開予定)
51 「ファンタスティック・プラネット」(ルネ・ラルー、1973)
52 「シュワルツネッガー/プレデター」(ジョン・マクティアナン、1987)
53 「AKIRA」(大友克洋、1988)
54 「ソイレント・グリーン」(リチャード・フライシャー、1973)
55 「レポマン」(アレックス・コックス1984
56 「タイム・マシン/80万年後の世界へ」(ジョージ・パル、1960)
57 「デューン/砂の惑星」(デヴィッド・リンチ1984
58 「ドニー・ダーコ」(リチャード・ケリー、2001)
59 「ゼロ・グラビティ」(アルフォンソ・キュアロン、2013)
60 『火星人地球大襲撃』(ロイ・ウォード・ベイカー、1967)
61 「マッドマックス2」(ジョージ・ミラー、1981)
62 「ダークシティ」(アレックス・プロヤス、1998)
63 「ジュ・テーム、ジュ・テーム」(アラン・レネ、1968)*2
64 「スリーパー」(ウディ・アレン、1973)
65 「宇宙戦争」(バイロン・ハスキン、1953)
66 「アビス」(ジェームズ・キャメロン、1989)
67 「遊星よりの物体X」(クリスチャン・ネイビー、1951)
68 「ウエストワールド」(マイケル・クライトン、1973)
69 「2300年未来への旅」(マイケル・アンダーソン、1976)
70 「アイアンマン」(ジョン・ファヴロー、2008)
71 「プレステージ」(クリストファー・ノーラン、2006)
72 「セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身」(ジョン・フランケンハイマー、1966)
73 「アメリカン・アストロノーツ」(コリー・マカビー、2001)*3
74 「フラッシュ・ゴードン」(マイク・ホッジス、1980)
75 「スター・ウォーズ/ジェダイの帰還」(リチャード・マーカンド、1983)*4
76 「トゥルーマン・ショー」(ピーター・ウィアー、1998)
77 「アバター」(ジェームズ・キャメロン、2009)
78 『World on a Wire』(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、1973、TVミニシリーズ)
79 「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(押井守、1995)*5
80 「スター・トレック」(J・J・エイブラムス、2009)
81 「アイアン・ジャイアント」(ブラッド・バード、1999)
82 「パシフィック・リム」(ギレルモ・デル・トロ、2013)
83 「来るべき世界」(ウィリアム・キャメロン・メンジース、1936)
84 「フランケンシュタイン」(ジェームズ・ホエール、1931)
85 「アンドロメダ…」(ロバート・ワイズ、1971)*6
86 「バーバレラ」(ロジェ・ヴァディム、1968)
87 『呪われた者たち』(ジョセフ・ロージー、1963)
88 「マイノリティ・リポート」(スティーヴン・スピルバーグ、2002)
89 「ミクロの決死圏」(リチャード・フライシャー、1966)
90 『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』(W・D・リクター、1984
91 「アタック・ザ・ブロック」(ジョー・コーニッシュ、2011)
92 「ソラリス」(スティーヴン・ソダーバーグ、2002)
93 『THX 1138』(ジョージ・ルーカス、1971)
94 「アルファヴィル」(ジャン=リュック・ゴダール、1965)
95 『セレニティー』(ジョス・ウェドン、2005)
96 「ピッチブラック」(デヴィッド・トゥーヒー、2000)
97 「スーパーマン」(リチャード・ドナー、1978)
98 「2010」(ピーター・ハイアムズ1984
99 「トリコロール/赤の愛」(クシシュトフ・キェシロフスキー、1994)
100 「インデペンデンス・デイ」(ローランド・エメリッヒ、1996)

日本未公開でナニソレ? というものがちょこちょこあって、調べてみるとおもしろそうだったりそうでもなかったり、まあ無難なリストなんだろうけど、個人的には48と66と69と74は外して、かわりに「地球最後の日」と『決死圏SOS宇宙船』と「光る眼」と「地球爆破作戦」を入れたい。あと78はTVのミニ・シリーズらしいけどそれがいいんだったら「不思議な村」や「プリズナーNo.6」をとか、94があってなんで「華氏451」がないのとか、あっ「スローターハウス5」も落ちてるじゃんとか、日本映画がアニメしかないのはどうなんだ「ゴジラ」と「マタンゴ」くらい入れんかいとか、ヘタなSFよりも「カプリコン・1」や「ライトスタッフ」や「アポロ13*7のほうがよほどセンスオブワンダーがあるよねえとか、いろいろ思いを馳せて愉しいリストではあります。未見のものの中で22、32、42、49がhuluで見られるみたいなので近いうち見ようと思う。



しかしhttp://d.hatena.ne.jp/takanofumio/20140201の記事もそうですが、わたしこういう作業が好きなのねえ(他人事のように)。

*1:http://d.hatena.ne.jp/takanofumio/20060922#p2

*2:allcinemaに項目なく、日本公開があったのか不明

*3:see also 「■コリー・マカビー監督 『アメリカン・アストロノーツ』上映会:究極映像研究所

*4:allcinemaさんは断固として「ジェダイの復讐」と言い張っている

*5:see also「インターナショナル・ヴァージョン

*6:子どもの頃から疑問なんだけど、なんでこの映画タイトルが「アンドロメダ病原体」じゃなくてヘンに余韻を残してるの?

*7:そういや「コクーン」も入ってないな

「無垢の心と誘惑の影」

突然ですが。

大学3年になった春、所属していた学内の劇団の1コ下の後輩が「台本を書いたので演出をやってほしい」と言ってきた。



そのサークルでは(というかだいたいどこの学生劇団でもそうだと思うけど)学年が下のうちは下っ端・使い走りが主で、上級生になってやっと作・演出・舞台監督といった主要な役目にたずさわることができる、というのが慣わしだった。だから新2年生が自分の書いた台本を上演しようとするのはまだちょっと早いかなという感じがあって、本人もある程度そう感じていたのと「演出までやって責任を背負い込むのはしんどいし」という理由でおハチがこっちにまわってきたのだった。彼は「○○さん(私)いっぺん演出やってみたいって言ってたんでしょ」というのだが、私はそんなこと言ったおぼえはないので、多分ほかの誰かとまちがえたんだろうと思う。私はといえば、それまでそこでは端役の役者・大道具・照明オペレーターなどなんでも屋みたいなことをやっていて、だったら演出もやってみたっていいなあせっかくだしと考えたのだった。



引受けることにした私は、作者と主役に内定していた女優(彼女は私と同学年だった)と3人で最初の打ち合わせをした。あとでわかったことだけど、作者と主役は当時つきあっていてこの作品も作者が彼女のために書いたものだったのである。ハハハ(乾いた笑い)。それはともかく私が主張したのは、通常ここでは本公演として春と秋に興行を打つのが定例になっているけれど今回の公演はそもそもの立ち上がりがイレギュラーなので、臨時・特別公演として規模を小さくしてやろうよということだった。すなわち、劇団員の全員が参加するのでなく有志を募るということ、本公演は通常月曜から土曜の1周間にわたって行われるのに対して初日を水曜にするということ、そして倹約を旨とし制作費(公演のためにメンバーが一人ずつ出すお金)をちょっとお安くするということ、などをもって特別と称したわけである。ほんとは「アトリエ公演」なんて言えればカッコよかったのだけど、公演場所は普段の稽古場兼劇場(大学構内にある掘立小屋)なのでアトリエもへったくれもなかったのだ。



作品の内容はというと、作者が女優のために書いたというだけあってロマンチックな文学青年の若書き、主役はそりゃさぞかし気持ちよかろうという代物だった。とはいっても別にまわりに迷惑がかかるわけでもなし、「特別公演」の気楽さもあってみなそれぞれ自分のやりたいことができてまあ幸せだったように思う。私もまた、台本の意図を180度ひっくり返すようなオープニングシーンを勝手にくっつけようとして作者とモメたりしつつ(このシーンは大幅に修正することになった)、それまでぼんやり考えていたことを実際に試してみることができたのは楽しかった。具体的にいうと客入れから幕開けまでの流れやら、人形振り(パントマイム)を取り入れることやら、チラシに芸名を使うことやら(当時の座長の方針でそれまでの公演では本名で活動していたのだ)そういうことである。そのなかにはその後劇団のスタンダードになるものもあったりして、それは素直にうれしかった。



とくにカーテンコールには凝ってみた。以前の作品ではわりとここがおざなりというか、劇が終わったあとは役者が出て行って挨拶さえすればいいんでしょという雰囲気だったのだけれど、私は本編の出来がイマイチでも、ここをかっこよく締めることができれば全体の印象も3割増し位になるんじゃないかと考えて、当時ハマっていた夢の遊眠社の舞台など参考にしつつ工夫をしたのである。すなわち、

劇クライマックス。主役男女(イイもん)vsその他大勢(ワルモン)の乱闘。音楽。
なんだかんだあって乱闘終わる(どっちが勝ったのかは曖昧)。照明かわり、静かになった舞台中央に主役女、中央奥(すこし高くなっている)に主役男うかびあがる。
ふたり「乾杯!」(これが最後の科白)。音楽高まり、暗転。
明転。舞台上に役者が整列して頭を下げている。音楽は続いたまま。役者顔を上げ、一呼吸おいてまたお辞儀をする。暗転。
客電が灯り、出入口が開く。音楽が流れるなか客出し。

こういうふうに字で書くと何がどういいのかよくわからないかもしれないけど。土曜の千秋楽のみ役者紹介をさせてもらったのだけど、無言のカーテンコールというのはよいものだ。そしてその時の、ヤマ場から終演に使ったのがこのウィリアム・アッカーマンの"The Impending Death of Virgin Spirit"という曲である。ああ美しい。今から30年以上前の、連休の次の週だったからちょうど今ごろのお話である。

父の書棚

父親の一周忌のために、田舎に帰る。


実家には3畳ほどの部屋があって、父が元気なころはそこを書斎めいた場所として使っていたのだけど、病気で寝たきりになってからはすっかりただの物置になってしまっていた。スライド式の2本をふくむ4本の書棚には、父の蔵書とともに母や私や弟の本が乱雑につっこんであって、(前職の)職業柄というかなんというか、実家に帰ってその部屋に入るたびに非常に気持ち悪い感じを味わっていた。


寝たきりでもう二度とその部屋に入ることはないとはいえ、生きているあいだはその部屋の主は父なので、いくら本棚がめちゃくちゃだろうが勝手にいじろうとは思わなかったのだけど、父が亡くなってしまうと、今度はその棚を乱雑なままにしておくほうがよくないように思えてきた。というわけで、今回の帰省に際してその棚の整理をしてやろうと思ったのであった。


棚の中身はおおざっぱに分けて4種類ある。1.父の仕事のための本、2.父の仕事以外の本、3.私が高校時代までに買った本(文庫本がほとんど)、4.母と弟の本である。4はホンの数冊程度で母も弟も別に自分の本棚や物入れを持っているので、これらはそこへ移動する。そして1と2をきちんと整理して収納したあと、空いたところに3を間借りさせていただく、という方針である。


父は放送局の技術職の社員だったので、仕事の本というのはテレビやラジオの専門書ばかりで、「ラジオ工學・全4巻」だの「テレビジョン受像機の設計」だの「NHK技術ハンドブック」だのおそろしく古い本が多い。こういう本というのは、技術史的な資料として今でもそれなりの価値があるものなのかどうなのか門外漢にはサッパリわからないが、「書名・著者名・出版社名と体裁だけで、だいたいの見当をつけてそれっぽく並べる」という元書店員としてのスキル(ホントかよ)を最大限に発揮して棚に詰めなおすのである。


そういった技術書を前面に配し、その隣の端の1本には、仕事がらみではないものの父が好んで読んだ理工系の一般書を並べてみる。自分が子どもの頃の印象だと講談社ブルーバックスなんかもっと膨大にあった気がしたのだけど、整理してみると10冊くらいしかなくて拍子抜けをした。このくらいならド文系の自分の本棚にもある。それとも処分したのであろうか。


スライド書棚の後ろ側には、中公の「日本の文学」全80巻を並べる。数冊を除いてほとんどページを開かれた様子のない全集である。他の棚には小学館の「大日本百科事典」(ジャポニカ)もあったりして、まあ要するにそういうウチだったのだ。高度成長とか、新中間層とか、そういう……*1


後ろ側の棚のいちばん端には、松本清張高木彬光黒岩重吾といった作家のカッパブックスやその他の読み物、「天中殺入門」「高血圧がなおる本」株がどうしたこうしたというような本*2をつっこみ、一応完成ということにした。


こんな感じである。


作業しているうちに、なんとなく「この書棚によって『亡くなった父はこのような人間だったのだ』ということを表現すること」が自分の使命なのではないかと思い始めてきた(ちょっと大げさですが)。そしてそれは、たぶん自分にしかできないことだろうというふうにも思ったのだった。残念なのは、自分の作ったこの棚を父に見てもらえないことである。まあ、見ても「ほー」くらいしか言わなかっただろうけれども。


マイ・ウェイ?ベスト・オブ・フランク・シナトラ

マイ・ウェイ?ベスト・オブ・フランク・シナトラ

本のあいだからこのCDが出てきたので、お土産にいただいて参りました。

*1:ただしジャポニカに関しては私や弟が子どものころ何かにつけて開けて見ていた記憶があるので、ただの置物でもったいないということはそんなにない。また「日本の文学」も、自分が中学高校くらいに漱石や谷崎や芥川の巻だけ読んだりしてはいた。そして今回整理してみて、「夏目漱石・1」が行方不明になっているのが明らかになったのであった(悲)。

*2:父は退職後ちょっと株をやっていたのである。他に四季報やなんとかチャートといった雑誌が山のようにあったのだけど、それらは母が処分していた。

『ハイレッド・センター:直接行動の軌跡展』を見る


招待券をもらったので、松濤美術館の「ハイレッド・センター:直接行動の軌跡展」を見てきた。


ハイレッド・センターとその前史としての読売アンデパンダンについては、赤瀬川原平の2冊の本『東京ミキサー計画』『反芸術アンパン』を通して知っていて、とくに『東京ミキサー計画』には学生時代たいへん憧れたものであった。それからしばらくして西武美術館の中西夏之展で「コンパクト・オブジェ」を見る機会があったものの、それ以外のハイレッド・センターの作品の実物にはお目にかかることができなかった。


それを今回ようやく見ることができたわけですが、ただ実物といったってこの場合それぞれの「作品」の記録写真やら案内状やら同人誌の展示が中心なわけで、作品そのものというよりその痕跡と言うべきもののほうが多いのである。美術展というよりは演劇博物館みたいなもの。観客はそういう作品の痕跡を見ながら「こーゆー感じなのかなー」と類推するしかない。


もっとも、私など本を読んですっかりわかった気になっていたけれど、赤瀬川の巨大な千円札の模写(未完成)を見て、ただ千円札を模写するというアイディアを思いつくこととそれを実際にやってしまうことの隔たりを目の当たりにしたのであった。いやもうとにかく細かくて大変そうで、正確な座標を得るために鉛筆で書かれたグリッドの下書きが残っていたり、手作業で描かれたお札の模様の細かいところがよーく見ると結構震えていたりしていてとても生々しい。決して「紙幣を模写することによって現代社会のある種の側面を描ききってみました(ドヤ)」で済むようなものではなくて、それはやっぱり実物を見ないと(文章や写真だけでは)わからないものなのだ。


同様に赤瀬川の「水滴のマリア」のレプリカもあって、これは是非ホンモノが見たかった(どこにあるんだろう?)。こっちもやはりやたら細かい水滴の描き込みが圧倒的で、赤瀬川という人はこういう作業が好きなんだろうなあと思った。


他に印象に残ったのは(ハイレッド・センターの作品ではないが)高松次郎の影の連作で、私これ知らなかったのだけどとても不思議で美しい作品だった。壁?に子ども?の影がちょっとぶれたみたいに二重にうつっている作品など、原爆で建物に焼き付いてしまった男の影を連想してしまったりして、綺麗だけど不吉な感じもするという。


あるいは「美術手帖」の付録だというものすごく細かい書き込みのピンナップやら、「フィルム・アンデパンダン」と名づけられた映像作品やらには、当時の社会状況を彷彿とさせる言葉やイメージが必ずまぎれこんでいて、ああ確かに政治を切ると血が出る時代だったのだなあと思わせられた。


そんなこんなで私はすっかり「観客」になってしまい、美術館を出たあともしばらくその感じが残っていて、道に落ちている紙クズを見ても「おっ芸術か?」なんて思ってしまう有様であった。まあそんな気分も5分もすれば消えてしまったのだけど、そういうフワフワした感じもなんだかずいぶん久しぶりだったのでした。


(美術館の中2階? からこっそり撮った写真。千円札の巨大な模写やら梱包など。端の方にちらっと高松次郎の紐のオブジェ。→http://f.hatena.ne.jp/takanofumio/20140403101317


『反芸術アンパン』のなかの、赤瀬川が初めて読売アンデパンダンに接するときの話が美しい。

……いちばん驚いたのは机の絵の話だった。キャンバス代りのベニヤ板のパネルに荒っぽく机の絵が描いてあって、その絵の机の真ん中に穴が開けられ、そこにじっさいの花が活けられて、その花が画面からヒューッと突き出しているのだという。
「ホンモノの花ビラだよ。前を通るとヒラヒラ風で揺れるんだもの」
と、見てきた友人は話してくれた。……


「序章 熱と熱の物々交換」より

反芸術アンパン (ちくま文庫)

反芸術アンパン (ちくま文庫)

ホオノキさんのこと。

「小学校の高学年、5・6年のときにね」
「うん」
「いっこ下に、ちょっと仲良くなった女の子がいたのね」
「へえ」
「小学校って中学や高校みたいに部活とかがないから、違う学年で仲良くなるのってあんまりないじゃん」
「まあね」
「だからたぶん、児童会とか委員会活動とかで、そういう機会があったのかなと思うんだけど」
「児童会なんかやってたの」
「児童会はやってなかったかな……保健委員をやったような気がする」
「ふーん」
「ただ仲良くなったって言っても別にたいしたことがあったわけじゃなくて、顔と名前が一致したとか、ひとことふたこと言葉を交わしたとか、その程度の話なんだけどね」
「はい」
「でもまあ同じクラスの女子とさえ、しゃべるのにちょっと意識するような年ごろなわけだからさ、学年を越えてそういうつきあいがあるのって結構珍しかったわけですよ」
「なるほどね」
「……いま思い出すと、その子ほかの子とはちがって、ちょっと独特の雰囲気があったなあと思って」
「独特って?」
「大人っぽいっていうか。その子から話しかけられても自然な印象があったのもそういう雰囲気のせいのような気がする」
「へえ」
「……でね、その子、名前がホオノキさんていったんだよね」
「ホオノキさん」
「字はたぶん『朴木』って書いたんだと思う。当時は僕はなんの知識もなかったから『見慣れない字だなあ』と思っただけだったんだけど、もしかすると、在日コリアンの2世か3世だったのかなーと思って」
「ああ、はいはい」
「違うかもしれないけどさ。でももしそうだとしたら、独特な雰囲気だったのも、納得できるような気がするんだわ」
「わかんないけどね」
「わかんないけど。でもまあ他の女の子たちとはちょっと違う印象があったのは確かなんです」
「可愛かった?その子」
「……可愛かった」
「じゃあ好きだったんじゃないの?」
「好き……までは行かなかったと思うけど……仲良くなれてちょっと嬉しかったっていうのは、あったかなあ」
「(笑)……で、そのあとどうなったの?」
「……どうもなんなかった。僕が卒業して中学校にあがったら、それっきりになっちゃった」
「その子は同じ中学に行かなかったの?」
「うん……うちの学区は小学校も中学校もほぼおんなじで、学校自体も向かい合って建ってたから、普通だったら1年後にまた同じ学校で会えたはずなんだけど、見た覚えがないんだよね」
「別の中学に進学したとか?」
「かもしれない。だから、とにかく彼女の思い出は小学校の時だけ」
「うん」
「たまーに思い出すんだよね、あの子のこと。『朴』って字を見たときとか」
「もう1回会いたい?」
「……できればね。もう1回会って、ちゃんとお話ししてみたいよ」
「そうだね」
「……無理だろうけどね、もう」
「……そうだねえ」

辻井喬『叙情と闘争 辻井喬+堤清二回顧録』を読む

80年代に東京で青春をすごした自分にとって、セゾングループというのは影響というかたいへん思い入れのある企業だったので、それが一世を風靡する様子やその後没落してゆくさまをながめるのはとても感慨深いものがあった。そしてその経営者の半生記ともなれば、さぞかしダイナミックな挿話に満ちているのだろうとおもいきや、期待したようなお話はあんまりなくて、かわりに文学者・辻井喬の内省的な文章が続くのであった。内省的というか本人の手による詩の一節がしばしば引用されて、その背景の事情とともに語られるのですが、正直言ってこの詩というやつ、なんだかやたら感傷的であんまり感心しないのよね。いや、作品をちゃんと全部読んでみたら感想も変わるのかもしれませんけど。


これは読売新聞に連載されたものらしいけど、時系列順ではなくそれぞれの章ごとに別のトピックスについて書かれているということもあって、はじめの方は時間が行ったり来たりしてちょっと読みにくい……うーん、読みにくいのにはもうひとつ理由があって、この方あんまり描写がうまくないような気がする。父康次郎の死ぬ場面。

 父は職員の仮眠室に寝かされていたが僕の顔を見て、
「脳溢血か?」
 と聞いた。父がことあるごとに敬愛の言葉を惜しまなかった祖父は、”脳溢血”で急死していたから、堤康次郎はいつもその病気を気にしていたのだ。
「それだけお話になれるのですから違います、多分貧血と思います」
 と僕は印象とは違うことを言った。目の光や呼吸の乱れから、これは面倒な症状だと直感していたのだ。国立東京第一病院に運びこむと医長の三上次郎が現れ、部下にテキパキと応急処置を命じてから僕を医長室に呼んだ。
心筋梗塞です。出来るだけのことはしますが予断は許しません。ご親族にはお報せになっておいた方がいいでしょう」
 と言った。彼は僕が肺結核で寝ていた時の主治医だった人の弟で、前にも紹介されて知っていたので話しやすかった。
 遅ればせに異母兄弟とその母親も駆けつけてきた。父の心臓はどんな薬を使っても頑として動かなかった。二日目、アメリカの大学に行っていた末の異母弟が帰国した。その後、僕は異母弟の一番上の義明を病院の近くのレストランに誘い、今度はむずかしいかもしれないからその覚悟をしておくように、万一の時は助けるから心配しなくていい、僕は後を継ぐつもりはないからと話した。二十六日の朝、父は口からいかにも苦しそうな茶色の液体を吐き、それが合図であったかのように呼吸が止まった。三上医長が聴診器を当て耳からそれを外して掌を合わせた。……


「父の死」


ながながと引用してしまったけど、応急処置のあと心臓が「頑として動かなかった」のならその時点でもう死んじゃってるのではないのだろうか? なんだかその後自発呼吸してるみたいに書いてあるけど、どういう状況なのかちょっとよくわからない。


こういう明らかな矛盾でなくとも、たとえば共産党員から父親の秘書への転身だとか、はじめはなりゆきのようにして入社した西武百貨店を一流の会社にしてゆく様子だとか、またそのグループが崩壊してゆく過程など、詳しく話を聞きたいと思う部分はあんがいさらっと流されることが多かったりする。そのかわり強調されるのは三島由紀夫安部公房森有正といった文化人との友情であり、政財界の要人のエピソードであり、ソ連や中国との交流の様子である。まあそれはそれで興味深いのだが、なんだかどうも核心を語らずはぐらかされてるような気分になる。共産党員だった過去と父親の秘書だったことと大企業の経営者であることと晩年「9条の会」で活動していたこととは本人の中でどう折り合いがついていたのかさっぱりわからないし、ビジネスの話も百貨店本体やカード事業、「無印良品」、セゾン美術館などについては紙幅を割いているのに、パルコ・ファミリーマート・WAVE・チケットセゾンなどについては一言も触れられてなかったりする。この扱いの差というのはなんなんだろう。*1


以前上野千鶴子との対談『ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)』を読んでとても面白かった記憶があるのだけど(感想→http://d.hatena.ne.jp/takanofumio/20090201)、もう一度読み返してみたくなった。あの中で上野が堤に突っ込んでたじたじとなる場面がしばしばあったような気がするが、堤清二氏には実生活の上で誰かがもっときちんと突っ込んであげる必要があったのではないかなーと無責任に思ったりする。まあ、グループの負債を清算するために私財をはたくという、これ以上ない突っ込みを受けておられるのだけれど。

叙情と闘争―辻井喬+堤清二回顧録

叙情と闘争―辻井喬+堤清二回顧録

*1:備忘のために書いておくと、言及のあるのは西武百貨店西友・リブロ・ピサ・サンシャインシティ朝日航洋安部公房スタジオ・西武劇場・セゾン現代美術館・セゾンカード・無印良品西洋環境開発・西洋フードシステムズ・地中海クラブなど。