元軍人のスピーチ。

 今年の1月にNHKBSでやっていたイギリスのドキュメンタリー『アメリカン・フューチャー』の第1部「なぜ戦うのか」を今ごろ見ている*1。そのいちばん最後の場面、ある退役軍人のパーティ。

サラザール*2は退役軍人の名誉をたたえるパーティに出席しました。
ともに苦しみを分かちあった人たちのあいだでは、論争をまねくような発言は出てこないと思っていました。
しかし、それは間違いでした。
イラク駐留アメリカ軍司令官を務めた、リカルド・サンチェス中将がスピーチをしました。
私は彼が戦いを呼びかけると思っていました。
しかし私たちが聞いたのは、真にアメリカ的なメッセージでした。
投票への呼びかけです。


イラクでの戦いも6年目を迎えます」
「その政策に異論があるならそれを表明すればいいのです」
指導力が危機にあると思うなら、その気持ちを示すのに
大統領選挙の年ほどよいときがあるでしょうか」
共和党支持か民主党支持かは関係ありません。
私が申し上げたいのは
アメリカ国民全員がこの重要な年を逃すことなく
考えを表明しなくてはならないということです」
「この国の将来を思うなら
私たちはワシントンへメッセージを伝えるべきです」


銃を撃ちまくる男たちの集まりとは程遠いものでした。
それは、自由の対価が、ときとして流血と遺されたものの悲しみによって支払われることを知っている人たちの集まりでした。
アメリカの建国以来受け継がれているもの。
召集ラッパが鳴っても、アメリカ市民は良心に従い声をあげてきました。
銃声が響けば、自由な論争がそれに応えるのです。

 今年の初めに話題になった本の帯の惹句「日本はすばらしい国だ。侵略国家などではない!」と比べると、なんというか成熟の差を感じずにはいられない。まあ比べるのもアレかもしれないけど。
 アーリントン国立墓地というのが、南北戦争のときの南軍のリー将軍の邸宅の跡に作られたものだということもはじめて知った。
 というわけで…

*1:"The American Future / American War" Oxford Film and Television/BBC(UK,2008)、シリーズプロデューサー/ニコラス・ケント、出演/サイモン・シャーマ

*2:この前の場面でインタビューをうけた元軍人。ノルマンディ上陸作戦に参加。