『THE 有頂天ホテル』感想

 フジテレビで放送したのを録画。

 後日みたので、その感想。
 面白くなくはないけど、どうなんでしょう。脚本がだいぶ無理矢理なのでは。
 無理矢理その1、stage director/stag directorの取違え。
 無理矢理その2、伊東四郎の総支配人が冗談で顔を白塗りにして表を出歩けなくなるというシチュエーション、顔隠してぱーっと走って帰ればいいじゃんと思ってしまう。
 無理矢理その3、松たか子が会社社長の愛人と間違われるエピソード、これも素直にごめんなさいとあやまっちゃえば済む話にしか見えない。
 無理矢理その4、角野卓三のエピソードも同様。
 無理矢理その5、篠原涼子が娼婦に見えない。エトセトラ、エトセトラ・・・。
 こういう脚本には登場人物がそのように行動せざるを得なかったのっぴきならない理由が必要なはずなのに、その部分の説明がことごとく省略されてしまっているので、いったん乗り損ねた観客は果てしなくおちこぼれてしまうのだ。
 そういう映画がヒットした(去年の日本映画興行収入第3位だそう)のは、三谷幸喜という作家があらかじめ好感をもって見られているからにちがいない。でもなんで三谷さんってこれほど持ち上げられるんだろう。テレビドラマで無条件で好評だったのは『古畑』と『王様のレストラン』しかないような気がするんだけど。個人的には『総理と呼ばないで』が好きだったし、『HR』や『新選組!』が一部に圧倒的な人気を誇ったりはしたけれど、週刊誌にボロクソに言われたりコケたりした作品の方がずっと多いはず。
 ネット上を徘徊してフツーの人の評判を見てみると、「娯楽作品なんだからむつかしいこと言わないで楽しめばよい」という意見がすごく多い。それも誰かが批判した「むつかしいこと」への反批判というわけではなく、あらかじめ予防線を張っているという感じなのだ。つまり観客の側が「ホントはつっこみどころ満載なんだけどそれを言うのは野暮だろう」と自ら譲歩しつつ見てる、ということではないんだろうか。だとしたら作家としては随分不本意な話だろうなと思う。ただ、観客のこういう傾向は「東京サンシャインボーイズ」の頃からすでにあったような気もするし、その辺が三谷幸喜という作家の、なんというか核心なんじゃないだろうか。わりと思いつきですけど。
 俳優の中では、川平慈英が意外とよかった。いつも人の発言の尻馬にのって調子のいいことばかり言ってるベルボーイの役で、まあおトクな役柄だというのもあるんだろうけど、「真面目なんだけどどうしても軽くなっちゃう」という感じがうまく出てた。浅野和之*1の芝居をちゃんと見たのは初めてだけど、噂にたがわずいい役者だと思った。どの役にも最低ひとつは見せ場があり、作家の都合で作ったという役は基本的にないのが三谷幸喜の脚本の特徴で、これがいろんな俳優が彼の作品に出たがる理由だろう。
 最後のほうにワンシーンだけ知りあいが出てきた。出てるとはきいてなかったので、びっくりしました。

*1:あとで調べたらこの人1954年生まれなのね。そんなに年くってるふうには見えない! あと誕生日がおなじだった。