「よしながふみ×三浦しをんロング・ロング対談 私たちのマンガ道」より

よしなが 女の人が本当に複雑だと思うのは、それで20歳過ぎても彼氏がいないと、今度は、どうしたと言われるわけです。男の人はね、お前は早く一人前になって金を稼いで妻子を養えといわれる、それ以外の抑圧ってないんですよ。一本道なんです。どんなにエロくても「お前も男だ、しょうがない」って言われるだけ。妊娠させたら責任を果たせ、と言われるだけ。一本の道と抑圧に矛盾がないんですよね。でも女の人は、親から受ける抑圧でさえ一本道ではない。おしゃれにあまりにも興味がないとどうしたのかと言われ、あまりにおしゃれにとち狂っているともうちょっとなんとかしろと言われ。途中までは勉強しろと言うものの、東大にまでは行かなくていいと言われたり。親と親戚の人が言うことが違っていたりするし、周囲の言うことを全部聞いていると、女の子は頭がおかしくなっちゃうんですよ。どうしたらいいのかわからなくなってしまう。だから、女の子は人によって萌えポイント、つまり抑圧のポイントがみんな違うんですよね。抑圧ポイントがたくさんあるからこそ、女の子はものを考える機会がたくさんあるんだと思います。
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よしなが 口にするのも大事ですよね。なので私は、ことあるごとに「いつか大河で『日出処の天子』、いつか大河で『日出処の天子』」と言い続けています。


マンガ・エロティクスf 44」より