「スーパーマーケットマニアは、フランスでお宝を探す」より

スーパーで働く人は接客マニュアルを覚えさせられ、誰もが決まった挨拶と決まった対応である・・・と思うのは私が日本人だから。ここフランスではたとえ大型チェーンのスーパーであっても、個人対個人の買い物になるのです。レジで精算する時は、まずしっかり相手の目を見て、にこやかに挨拶をしないと、8割方ぞんざいな扱いをされるでしょう。またレジのおばさんから「そこのソレとって」とか、当り前のように頼まれ事をされるのには最初面喰らいますが、これも客と店員が対等である所以です。受け入れましょう。往来に従業員がいるにもかかわらず、商品が崩れっぱなしになっているのも、客がうっかり落として割ったビンがそのままになったりしているのも、どうやら管轄外の棚ではいっさい仕事をしない、という「受け持ちエリアを侵害しない」ことによるからなのです。見るに見兼ねて何度か片付けてしまいましたが、そんなことをしてしまったのはこの国でだけでした。そう、ここは徹底した個人主義の国なのです。


森井ユカ『スーパーマーケットマニア ヨーロッパ編講談社より