劣化したんだそうだ。

なぜ日本人は劣化したか (講談社現代新書)

なぜ日本人は劣化したか (講談社現代新書)

 本日搬入。
 まだ店頭でぱらぱらと眺めただけなので断定的なことは言えないのだけれど、気になった点をとりいそぎひとつだけ。
 日本人が劣化したことの証拠のひとつとして「なぞる本」の流行をあげていて、こうした本の読者(というか使用者)は案外30〜40代が多いと書かれているのだけれど、これは本を売ってる現場の感覚とはちょっとずれるのよね。
 このての本(ちなみに「なぞる本」の前は「30分で読める名作」本、その前は「声に出して読む名文」本が客層が重なる気がする)を買うのってたいてい自分より年上、つまり団塊からそれ以上のお年寄りが大半だと思う。ついでに言えば、普段から本屋に通う習慣がなく本のさがし方がよくわからないので店員に「こういう本をもってこい」と言いつける感じの方がひじょーに多い。ような気がします、個人的には。まあ版元のほうには愛読者カードのようなデータがあって、それをもとにして言っているんだろうとは思うけど、それはすくなくともうちの店の傾向ではない。
 ベストセラーというのは普段本を買わない人々に買わせてはじめてベストセラーになるんだ、てなことは昔から言われていることで、あらためて嘆いたりすることではないですわな。
 それよりも、「声に出して読む」「30分であらすじがわかる」「なぞる」みたいな本が、はじめに考えた人はともかく後追いするほうは、どれも安直な企画だというのがイヤーな感じがしますがね。適当に名の知れた、著作権の切れた名作を選ぶだけで仕事がほとんど終わってしまうんだから。つい、もっとちゃんと働かんかいっ、と思ってしまう。「声に出して読む『家畜人ヤプー』」とか「えんぴつでなぞり書き『ドグラ・マグラ』」なんていうのが出ればすこしは、おおう、と思うのだけれど。無理か。