『1Q84』のある(ない)風景

 こないだカウンターに来たおばあちゃん。


「春樹さんの……いますごく売れてるっていう本、ある?」
「申しわけございません、『1Q84』はただいま品切らしちゃっておりまして……」
「あ、そうなのやっぱり。……その本、なにがいいの?」
「(へ?)いや、もともとたいへん人気のある作家さんで、しかも5年ぶりの新作だったりするからだと思いますけど……」
「……角川春樹さんてかたいたわよね」
「あ、いえその春樹さんじゃありません、村上春樹です」
「ああそう。次いつ入るの?」
「それがちょっとわからない状態で……」
「それじゃしょうがないわねえ。じゃあ『人間失格』ってある?」
「(へ??)えーと、こちらです」


 オンナコドモが買わないとベストセラーにはならない、なんてそれこそ『気くばりのすすめ』だの『トットちゃん』だのころから言われていることだけど、こういうお客さんを目のあたりにするとちょっと複雑な気分。興味がないんだったら無理して買おうとしなくてもいいんじゃないかなー。どうせ1か月もすれば潤沢に出まわるようになるんじゃないかとおもうんですが。