レストランに入って殺されないために

弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」 - 「監禁レイプ・レストラン」心斎橋店…店長ら2人逮捕
児童小銃 - 安心について
 こないだの高校生の母親殺しの事件は、まあ言ってしまえば凡庸な猟奇事件にすぎないし、自分はもともとそういう話に興味がないので「ふーん」で済むのだけれど、このニュースは怖い。
 その怖さがどこから来るのかというのは「児童小銃」氏の的確な分析が説明するとおりだろうと思う。あえて比喩を重ねると、「広い道だと信じ込んで暢気にしていたが、はっと気づくと崖っぷちを歩いていた」という感じか。本当のこと(客を監禁する飲食店が存在しうるということ)を知ってしまった以上、知らなかった頃に戻るわけにはいかない。これからはそうした不安を抱えつつ生き延びてゆかねばならない。では、どうしたらよいか。
 上のリンクの記事では、ペッパーランチのほかの店はすぐに休業・廃業したほうがよいと書かれていて、それに対して「弁護士がそういうことを言うのは軽率だ」という意見やコメントがたくさんつけられている。けれど自分には(ブックマークコメントにも書いたけど)そう暴言とも思えない。
 問題の店はFCだとか、いや業務委託だとかいろいろ言われているけれど、かりにそうだったとしても、チェーン本部のもつ屋号を掲げて商売している以上、本部からSVなりFCといった肩書きをもった担当者がいたはず。この事件が店外でならともかく、営業時間中に店内で起きたということは、従業員がこのようなよからぬことを企む空気、まじめに仕事していない緩んだ雰囲気がもともとあったのではないか。そしてもしそうだとすれば、そうした店の雰囲気を察知できない・あるいは察知しても矯正できなかった本部担当者もまた仕事をしていなかったか無能だったということだし、そういうSVに給料を出しているチェーン本部のほうも、足元をしっかり見ていなかったということになるだろう。会社の規模を拡大するのに夢中できちんと従業員教育をやっていなかった、とか。
 そういった店のなんというか「緩んだ空気」「ガラの悪さ」は、客のほうからも注意してみればたぶんいろんなところに見つけられるものではないか。店が忙しくなってくると接客用語がすこしずつ省略されていったり、釣銭を投げてよこしてみたり、店内の目立たないところが汚れたり壊れたままになっていたり、窓ガラスが曇っていたり……。書いているうちになんだか他人事ではなくなってきたのでちょっと困っているけれど、そういった細部にまで、アルバイトを含めた従業員全員できちんと神経を行き届かせつつ店を経営してゆくというのは、そうそう簡単なことではない。
 というわけで、この事件からなにか教訓をひっぱりだすとすれば、「ちゃんとやってない店では何をされるかわからないから入るな」ということではなかろうか。どこかよその国ならともかく、日本に限ればそのように考えるしかないと思う。
 ただ、以上の推論は「店長・従業員が仕事に熱心でなかった」という仮定に基づいているので、もし「実はこの店は地域一番店として有名で、店長をはじめとして店員さんはみんなとても感じのいい人ばかりでした」みたいな証言が出てくると話が全部ひっくり返ってしまうのだけれど……。