「なぜ人を殺してはいけないの?」と子供に聞かれたら
ここ二三日、この話がアタマから離れずいささかうんざりしているところ。
このテの質問が聞いた人間にイヤーな感じを与えるのは、質問者が素朴に答えを知りたいと思っているからではなくて「答え方によって君という人間を値踏みしてやろう」という意図がみえてしまうからだと思う。仮にそういう意図がなかったとしても、聞いた方が勝手にそう解釈してしまうところもある。
とゆー前置きをしたうえであえて答えるとするとですね。当然「誰が」問うたかによって、答えは変わります。
まず、現実の僕のコドモ(メイはまだ4才なので、サツキ(小2)の方ということになる)がこう聞いてきたとすると、まあとりあえずびっくりしますわな。で、お前ちょっとこっち来い、といって別室につれていって座らせて
「なんでそんなこと聞くのか」
「なんかあったのか」
「言いたいことがあったら言ってみろ」
てことになると思う。「それは〜だからだよ」なんて答えには金輪際ならない。
また、自分のコドモでない子どもから聞かれた場合でも、
「そんなこと言うもんじゃないよ」
などと適当にうけながしておいて、あとからその子の親御さんに
「××ちゃんこないだこんなこと言ってたよ」
と告げ口をする。あとはその家庭内でのなりゆきをそっと見守る、という感じだろうか。
では、特に知り合いでない子どもから聞かれた場合。とは言っても通りすがりの小学生がいきなり「なぜ人を〜」なんて聞いてくるシチュエーションというのはヒジョーに考えづらいので(どっか外国の不条理劇にありそうだ)、「オトナの人にいろんなことを聞いてみよう」みたいな企画でたまたまそういう質問が出た、としてみる。
「××小5年1組タカノフミオです。えーと、なんで人を殺しちゃいけないんですか?」
「え? ・・・タカノくん、どうしてそんなこと聞くの?」
「特に理由があるわけじゃないんですけど、なんでかなあって思って」
「じゃあ不謹慎だからそんなことを言うのはおよしなさい」
ああ、やっぱりこうなっちゃった。
最後に、子どもでなくいい年した大人が「もし子どもに『なぜ人を殺してはいけないの?』と聞かれたら、あなたどう答えます?」と聞かれた場合、すなわちこのスレッドタイトルどおりの状況。
「それ聞いてどうしようってんですか?」
ちょっと喧嘩腰になっちゃうかも。喧嘩できないような間柄の場合は、「ああこの人なんか哲学っぽいこと語りたいんだなー」と思い、
「んーまあ時と場合によっちゃあアレかもしれないですがねえ」
などと言葉を濁しながら今後のその人物とのつきあい方を考えるだろう。
というわけで、唯一この問いに真剣に答える必要のある状況は、当人が本気で殺人を考えている場合だけだ。とくに、彼が包丁をにぎってこっちに歩きながら
「俺があんたを殺しちゃいけないわけがあるのか?」
と聞いてきたとしたら、僕は必死になってその理由を考え、説得しようとするに違いない。このばあい、いままでのシチュエーションとの違いは内容ではなくその「切実さ」だけなのだが、しかし「切実であること」は、いやしくも人が人にモノを尋ねるときの最低限の礼儀ではないだろうか。面白半分に「ちょっと聞いてみたかったから」の質問など、犬に食われてしまえばよいと、個人的には思うのだ。
(後日追記)
これは下書き状態のまま放置してあったもの。特に書きかけというわけではなく完結しているようだが、なぜ公開にしていなかったのかはわからない。どこか不満だったのだろうか。