「かつて書かれたもっとも影響力のある100冊の本:古代から今日までの思想の歴史」リスト

「世界に影響を与えた100冊の本&文書をリスト化するとこんな感じ」という記事をGIGAZINEが出していて、読んでみたら成程と思うものや何これと首を捻るものが並んでいたのですが、なにより気持ち悪いのはその書名・著者名の表記がまちまちなことでした。邦訳のあるものは書名の部分がアマゾンのリンクになっており基本的にそれぞれの出版社の表記ルールにしたがっているので、著者名がフルネームのものと名字だけのものが混在していたり、また何巻かにわかれているものは<上>とか<1巻>だけが挙げられていたり(『ドン・キホーテ』は「前篇・1」だけが世界に影響を与えたわけでもあるまい)、あるいは元のリストが書名のアルファベット順になっていたのをそのまま訳したおかげで、日本語で読むと書名も時代も滅茶苦茶な順番になってしまっていたりするのです。
内容は知ってたり知らなかったり特にこだわらないが並べ方は異常に気になるという、元書店員としての気質(ほんとか)ゆえ、ガマンできずにリストを作りなおしてみました。ネタ本("The 100 Most Influential Books Ever Written: The History of Thought from Ancient Times to Today"ISBN:9780806520001)を同様にリスト化したページ"The 100 Most Influential Books Ever Written by Martin Seymour-Smith - The Greatest Books"を元に成立・発行順に並べましたが、経典や古代の文献についてはひどく適当です。日本語訳のあるものは現在日本で主流・一般的だろうと思われる書名/著者名で挙げてあります。著者名は煩雑にならないかぎりフルネーム。アタマの数字はGIGAZINEの該当記事についている番号。

04 「論語孔子(BC8C-BC3C)
51 「易経」(BC8C頃)
63 「イーリアスホメーロス(BC8C)
63 「オデュッセイアホメーロス(BC8C)
96 「ウパニシャッドヒンズー教経典(BC7C〜)
90 「老子道徳経老子(BC6C)
48 「歴史」ヘロドトス(BC5C)
49 「戦史」トゥキディデス(BC5C)
46 "The Hebrew Bible"(ヘブライ語聖書)(BC5-4C)
18 "Corpus Aristotelicum"(アリストテレスコーパスアリストテレス(BC4C)
84 「国家」プラトン(BC375頃)
24 「法句経」(BC3-2C)
36 「ユークリッド原論」エウクレイデス(BC3C?)
47 "The Corpus:The Hippocratic Writings"(ヒポクラテス全集)ヒポクラテス(BC3C)
23 「物の本質について」ルクレティウス(BC1C頃)
02 「アエネーイスウェルギリウス(BC19)
07 「年代記タキトゥス(117)
61 「新約聖書」(1-2C)*1
03 「天地創造に関する比喩的解釈」アレクサンドリアフィロン(1C)
58 「自省録」マルクス・アウレリウス・アントニヌス(2C)
70 「対比列伝」(「プルターク英雄伝」)プルタルコス(2C)
32 「エネアデス」プロティノス(3C)
43 "Gospel of Truth"(真実の福音)ウァレンティヌス(3C)*2
08 「アヴェスター」ゾロアスター教経典(3C?)
55 「カバラー」(3C-16C)
16 「告白」聖アウグスティヌス(397-400)
81 「クルアーン」(「コーラン」)(650頃)
44 "Guide for the Perplexed"(迷える人々の為の導き)モーシェ・ベン・マイモーン(12C)
88 「神学大全トマス・アクィナス(13C)
28 「神曲」ダンテ・アリギエーリ(1321)
34 「エセー」ミシェル・ド・モンテーニュ(1508)
76 「痴愚神礼讃」デジデリウス・エラスムス(1511)
65 「教会のバビロン幽囚」(ルター選集第3巻)(「教会のバビロニア捕囚」)マルティン・ルター(1520)
77 「君主論ニッコロ・マキャヴェッリ(1532)
41 「ガルガンチュアとパンタグリュエル」フランソワ・ラブレー(1534)
67 「天球の回転について」(「天体の回転について」「天球回転論」)ニコラウス・コペルニクス(1543)
53 「キリスト教綱要」ジャン・カルヴァン(1559)
69 「ピュロン主義哲学の概要」セクストス・エンペイリコス(1562)
29 「ドン・キホーテ」ミゲル・デ・セルバンテス(1605)
45 「宇宙の調和」ヨハネス・ケプラー(1619)
62 「ノヴム・オルガヌム――新機関」フランシス・ベーコン(1620)
39 "The First Folio of Shakespeare"(ファースト・フォリオウィリアム・シェイクスピアの喜劇、史劇、悲劇))ウィリアム・シェイクスピア(1623)
25 「天文対話」ガリレオ・ガリレイ(1632)
27 「方法序説」ルネ・デカルト(1637)
56 「リヴァイアサン」トマス・ホッブズ(1651)
71 「パンセ」ブレーズ・パスカル(1669)
35 「エチカ」バールーフ・デ・スピノザ(1677)
74 「天路歴程」ジョン・バニヤン(1678、1684)
78 「自然哲学の数学的諸原理」(「プリンキピア」「プリンシピア」)アイザック・ニュートン(1687)
05 「人間悟性論」ジョン・ロック(1689)
52 "Works of Gottfried Wilhelm Leibniz"(ライプニッツ著作集)ゴットフリート・ライプニッツ(17-18C)
92 「人知原理論」ジョージ・バークリー(1710)
60 「新しい学」ジャンバッティスタ・ヴィーコ(1725)
93 「人間本性論」デイヴィッド・ヒューム(1739)
31 「百科全書」ドゥニ・ディドロジャン・ル・ロン・ダランベール(1751-72)
26 "Dictionary of the English Language"(英語辞典)サミュエル・ジョンソン(1755)
12 「カンディードヴォルテール(1759)
17 「告白」ジャン=ジャック・ルソー(1770)
14 「コモン・センス」トーマス・ペイン(1776)
99 「諸国民の富」(「国富論」)アダム・スミス(1776)
22 「ローマ帝国衰亡史」エドワード・ギボン(1776-88)
20 「純粋理性批判イマヌエル・カント(1781-87)
06 「人口論」トマス・ロバート・マルサス(1789)
82 「フランス革命省察エドマンド・バーク(1790)
97 「女性の権利の擁護」メアリ・ウルストンクラフト(1792)
33 「政治的正義」ウィリアム・ゴドウィン(1793)
72 「精神現象学」ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1807)
100 「意志と表彰としての世界」アルトゥル・ショーペンハウアー(1819)
19 「実証哲学講義」オーギュスト・コント(1830-42)
68 「戦争論カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1832)
30 「あれか、これか」セーレン・キェルケゴール(1843)
15 「共産党宣言カール・マルクスフリードリヒ・エンゲルス(1848)
64 「自由論」ジョン・スチュアート・ミル(1859)
66 「種の起源チャールズ・ダーウィン(1859)
40 "First Principles"(第一原理)ハーバート・スペンサー(1862)
37 「雑種植物の研究」グレゴール・ヨハン・メンデル(1865)
98 「戦争と平和レフ・トルストイ(1865-69)
13 「ソローの市民的不服従ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1866)
94 「電気磁気論」ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1873)*3
91 「ツァラトゥストラはこう語ったフリードリヒ・ニーチェ(1885)
54 「夢判断」ジークムント・フロイト(1900)
75 「プラグマティズムウィリアム・ジェイムズ(1907)
95 「審判」フランツ・カフカ(1914)
83 「相対性理論アルベルト・アインシュタイン(1916)
59 「社会学大綱」ヴィルフレド・パレート(1917-19)
79 「心理学的類型」(「タイプ論」「元型論」)カール・グスタフユング(1921)
73 「論理哲学論考ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1922)
50 「我と汝」マルティン・ブーバー(1923)
09 「ベルゼバブの孫への話――人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判」ゲオルギイ・グルジェフ(1930?)
57 「科学的発見の論理」カール・ポパー(1934)
42 「雇用、利子および貨幣の一般理論ジョン・メイナード・ケインズ(1935-36)
10 「存在と無」ジャン=ポール・サルトル(1943)
85 「隷属への道」フリードリヒ・フォン・ハイエク(1944)
01 「一九八四年」ジョージ・オーウェル(1949)
86 「第二の性シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1949)
89 「統辞構造論」ノーム・チョムスキー(1957)*4
21 「サイバネティックス 動物と機械における制御と通信」ノーバート・ウィーナー(1961)
87 「科学革命の構造」トマス・クーン(1962)
38 「新しい女性の創造」ベティ・フリーダン(1963)
80 「毛主席語録」(「毛沢東語録」)毛沢東(1966)
11 「自由と尊厳を超えて」バラス・フレデリック・スキナー(1971)

しかし最新のものが1971年というのはどうなんでしょ。もっとなんかありそうだけど。構造主義関係がのきなみ入ってないし……。

*1:GIGAZINEでは「旧約聖書

*2:GIGAZINEでは「新約聖書福音書

*3:GIGAZINEでは「熱理論」

*4:GIGAZINEでは「生成文法の企て」