「踊る王子様」と王女様

前の日記を書いていると、つけっぱなしのTVのトップニュースで

「若手バレエ登竜門 日本人1〜2位独占 NHKニュース」

とのこと。すごいですね。

「世界のバレエファンの皆様こんにちは。今年もまた若きバレエダンサーの登竜門ローザンヌ・バレエコンクールの季節がやってまいりました。
解説はおなじみパロマ・コレーラさんにお願いいたします」
「どうも
「あ この子はダメです。足の形が悪すぎるわ。プリマにはなれませんね。早くバレエを諦める事です
「この子の踊りは雑すぎて話になりません
「ああ……この子は技術は確かです。ただ仕草が下品なのが気になりますね。これは指導者の責任でしょう
「この子は
「いいですね。非常にいいです。
「この子は自分が人にどう見えているのか……身体表現とは何なのか それをもう知っていますね。手も美しいわ」



よしながふみこどもの体温 (ウィングス・コミックス)』「踊る王子様」より

この場面好きなんだよね。

「かつて書かれたもっとも影響力のある100冊の本:古代から今日までの思想の歴史」リスト

「世界に影響を与えた100冊の本&文書をリスト化するとこんな感じ」という記事をGIGAZINEが出していて、読んでみたら成程と思うものや何これと首を捻るものが並んでいたのですが、なにより気持ち悪いのはその書名・著者名の表記がまちまちなことでした。邦訳のあるものは書名の部分がアマゾンのリンクになっており基本的にそれぞれの出版社の表記ルールにしたがっているので、著者名がフルネームのものと名字だけのものが混在していたり、また何巻かにわかれているものは<上>とか<1巻>だけが挙げられていたり(『ドン・キホーテ』は「前篇・1」だけが世界に影響を与えたわけでもあるまい)、あるいは元のリストが書名のアルファベット順になっていたのをそのまま訳したおかげで、日本語で読むと書名も時代も滅茶苦茶な順番になってしまっていたりするのです。
内容は知ってたり知らなかったり特にこだわらないが並べ方は異常に気になるという、元書店員としての気質(ほんとか)ゆえ、ガマンできずにリストを作りなおしてみました。ネタ本("The 100 Most Influential Books Ever Written: The History of Thought from Ancient Times to Today"ISBN:9780806520001)を同様にリスト化したページ"The 100 Most Influential Books Ever Written by Martin Seymour-Smith - The Greatest Books"を元に成立・発行順に並べましたが、経典や古代の文献についてはひどく適当です。日本語訳のあるものは現在日本で主流・一般的だろうと思われる書名/著者名で挙げてあります。著者名は煩雑にならないかぎりフルネーム。アタマの数字はGIGAZINEの該当記事についている番号。

04 「論語孔子(BC8C-BC3C)
51 「易経」(BC8C頃)
63 「イーリアスホメーロス(BC8C)
63 「オデュッセイアホメーロス(BC8C)
96 「ウパニシャッドヒンズー教経典(BC7C〜)
90 「老子道徳経老子(BC6C)
48 「歴史」ヘロドトス(BC5C)
49 「戦史」トゥキディデス(BC5C)
46 "The Hebrew Bible"(ヘブライ語聖書)(BC5-4C)
18 "Corpus Aristotelicum"(アリストテレスコーパスアリストテレス(BC4C)
84 「国家」プラトン(BC375頃)
24 「法句経」(BC3-2C)
36 「ユークリッド原論」エウクレイデス(BC3C?)
47 "The Corpus:The Hippocratic Writings"(ヒポクラテス全集)ヒポクラテス(BC3C)
23 「物の本質について」ルクレティウス(BC1C頃)
02 「アエネーイスウェルギリウス(BC19)
07 「年代記タキトゥス(117)
61 「新約聖書」(1-2C)*1
03 「天地創造に関する比喩的解釈」アレクサンドリアフィロン(1C)
58 「自省録」マルクス・アウレリウス・アントニヌス(2C)
70 「対比列伝」(「プルターク英雄伝」)プルタルコス(2C)
32 「エネアデス」プロティノス(3C)
43 "Gospel of Truth"(真実の福音)ウァレンティヌス(3C)*2
08 「アヴェスター」ゾロアスター教経典(3C?)
55 「カバラー」(3C-16C)
16 「告白」聖アウグスティヌス(397-400)
81 「クルアーン」(「コーラン」)(650頃)
44 "Guide for the Perplexed"(迷える人々の為の導き)モーシェ・ベン・マイモーン(12C)
88 「神学大全トマス・アクィナス(13C)
28 「神曲」ダンテ・アリギエーリ(1321)
34 「エセー」ミシェル・ド・モンテーニュ(1508)
76 「痴愚神礼讃」デジデリウス・エラスムス(1511)
65 「教会のバビロン幽囚」(ルター選集第3巻)(「教会のバビロニア捕囚」)マルティン・ルター(1520)
77 「君主論ニッコロ・マキャヴェッリ(1532)
41 「ガルガンチュアとパンタグリュエル」フランソワ・ラブレー(1534)
67 「天球の回転について」(「天体の回転について」「天球回転論」)ニコラウス・コペルニクス(1543)
53 「キリスト教綱要」ジャン・カルヴァン(1559)
69 「ピュロン主義哲学の概要」セクストス・エンペイリコス(1562)
29 「ドン・キホーテ」ミゲル・デ・セルバンテス(1605)
45 「宇宙の調和」ヨハネス・ケプラー(1619)
62 「ノヴム・オルガヌム――新機関」フランシス・ベーコン(1620)
39 "The First Folio of Shakespeare"(ファースト・フォリオウィリアム・シェイクスピアの喜劇、史劇、悲劇))ウィリアム・シェイクスピア(1623)
25 「天文対話」ガリレオ・ガリレイ(1632)
27 「方法序説」ルネ・デカルト(1637)
56 「リヴァイアサン」トマス・ホッブズ(1651)
71 「パンセ」ブレーズ・パスカル(1669)
35 「エチカ」バールーフ・デ・スピノザ(1677)
74 「天路歴程」ジョン・バニヤン(1678、1684)
78 「自然哲学の数学的諸原理」(「プリンキピア」「プリンシピア」)アイザック・ニュートン(1687)
05 「人間悟性論」ジョン・ロック(1689)
52 "Works of Gottfried Wilhelm Leibniz"(ライプニッツ著作集)ゴットフリート・ライプニッツ(17-18C)
92 「人知原理論」ジョージ・バークリー(1710)
60 「新しい学」ジャンバッティスタ・ヴィーコ(1725)
93 「人間本性論」デイヴィッド・ヒューム(1739)
31 「百科全書」ドゥニ・ディドロジャン・ル・ロン・ダランベール(1751-72)
26 "Dictionary of the English Language"(英語辞典)サミュエル・ジョンソン(1755)
12 「カンディードヴォルテール(1759)
17 「告白」ジャン=ジャック・ルソー(1770)
14 「コモン・センス」トーマス・ペイン(1776)
99 「諸国民の富」(「国富論」)アダム・スミス(1776)
22 「ローマ帝国衰亡史」エドワード・ギボン(1776-88)
20 「純粋理性批判イマヌエル・カント(1781-87)
06 「人口論」トマス・ロバート・マルサス(1789)
82 「フランス革命省察エドマンド・バーク(1790)
97 「女性の権利の擁護」メアリ・ウルストンクラフト(1792)
33 「政治的正義」ウィリアム・ゴドウィン(1793)
72 「精神現象学」ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1807)
100 「意志と表彰としての世界」アルトゥル・ショーペンハウアー(1819)
19 「実証哲学講義」オーギュスト・コント(1830-42)
68 「戦争論カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1832)
30 「あれか、これか」セーレン・キェルケゴール(1843)
15 「共産党宣言カール・マルクスフリードリヒ・エンゲルス(1848)
64 「自由論」ジョン・スチュアート・ミル(1859)
66 「種の起源チャールズ・ダーウィン(1859)
40 "First Principles"(第一原理)ハーバート・スペンサー(1862)
37 「雑種植物の研究」グレゴール・ヨハン・メンデル(1865)
98 「戦争と平和レフ・トルストイ(1865-69)
13 「ソローの市民的不服従ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1866)
94 「電気磁気論」ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1873)*3
91 「ツァラトゥストラはこう語ったフリードリヒ・ニーチェ(1885)
54 「夢判断」ジークムント・フロイト(1900)
75 「プラグマティズムウィリアム・ジェイムズ(1907)
95 「審判」フランツ・カフカ(1914)
83 「相対性理論アルベルト・アインシュタイン(1916)
59 「社会学大綱」ヴィルフレド・パレート(1917-19)
79 「心理学的類型」(「タイプ論」「元型論」)カール・グスタフユング(1921)
73 「論理哲学論考ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1922)
50 「我と汝」マルティン・ブーバー(1923)
09 「ベルゼバブの孫への話――人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判」ゲオルギイ・グルジェフ(1930?)
57 「科学的発見の論理」カール・ポパー(1934)
42 「雇用、利子および貨幣の一般理論ジョン・メイナード・ケインズ(1935-36)
10 「存在と無」ジャン=ポール・サルトル(1943)
85 「隷属への道」フリードリヒ・フォン・ハイエク(1944)
01 「一九八四年」ジョージ・オーウェル(1949)
86 「第二の性シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1949)
89 「統辞構造論」ノーム・チョムスキー(1957)*4
21 「サイバネティックス 動物と機械における制御と通信」ノーバート・ウィーナー(1961)
87 「科学革命の構造」トマス・クーン(1962)
38 「新しい女性の創造」ベティ・フリーダン(1963)
80 「毛主席語録」(「毛沢東語録」)毛沢東(1966)
11 「自由と尊厳を超えて」バラス・フレデリック・スキナー(1971)

しかし最新のものが1971年というのはどうなんでしょ。もっとなんかありそうだけど。構造主義関係がのきなみ入ってないし……。

*1:GIGAZINEでは「旧約聖書

*2:GIGAZINEでは「新約聖書福音書

*3:GIGAZINEでは「熱理論」

*4:GIGAZINEでは「生成文法の企て」

1月にみた映画

ボディガード スペシャル・エディション [DVD]

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再見。これは非常によくできたホイットニー・ヒューストンのPVだというのが私の持論であります(亡くなったのはとても残念)。ケヴィン・コスナーは普通にかっこいい。今の仕事でずっと立って待機する時間帯があるのだけど、コスナーの真似をしてみようと思う。足を肩幅にひらき両手を前に組んで立ち、顎をひいて、周囲を見回すときも顔を動かさず目だけで見る、そういう立ち方。

300〈スリーハンドレッド〉 [DVD]

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初見。楽しかった。アメリカにもケレンってあるんだなあと思った。原作はマンガ(グラフィック・ノベル)なんですね。ひとつだけ注文をつけさせていただくと、エフィアルテスというせむしの男がスパルタ軍に志願するもその障害のせいで仲間に入れてもらえず、その後クセルクセスから金と女をもらってペルシア軍に寝返るのだけど、この場合金と女は不要ですよね。スパルタに入ろうとして果たせずかわいさ余って憎さ百倍で相手方につくほうがドラマチックだと思う。マハーバーラタで、ビシュマに求婚して断られたせいで今度は彼を殺すという誓いをたててしまうアンバーみたいに。いま思わず例えにマハーバーラタの挿話を使ってしまったけど、この映画と同じテイストで「マハーバーラタ」も映画化してほしいなあと思ったり。
あと特に根拠はないんですが、紀里谷和明監督ってもしかするとこういう感じの映画が作りたいんじゃないかなあと思った。

カリスマ [DVD]

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初見。最近はなんだか映画の見方がたいへんへたくそになっている。この映画も、冒頭におかれた人質事件のエピソードの意味が、見終わったあとにいろんなレビューの文章を読むまでわからなかった。情けない。役所広司風吹ジュン洞口依子がいいのはもちろんなんですが、なんといってもよくわからん作業員の6人がかっこいい。それに比べると、木を守る青年の池内博之さんはなんかいまいちだなあという感じがしました(あいまいな感想)。映画全体としては『CURE』の方が好き。

アイランド 特別版 [DVD]

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まあまあ面白かったんですが、「秘密を知って逃げる→逃げた先で武器などを準備する→もう一度戻って敵をやっつけて大団円」という構成だと、どうしても逃げたあとのあたりでだれてしまう感じ。なのでそこにもうひと工夫あってほしかった。
映画のスタイルは全然ちがうのだけど『カプリコン・1』の場合「秘密を知ってしまい殺されそうになって逃げる→元の世界に戻って来て大団円」という非常にシンプルな構造なのが勝利の鍵なのだなあと思った。この場合「生きて戻ってくる」だけでワルモノの企みが崩壊してしまうわけで、そのへんの作り方も実にうまい。ピーター・ハイアムズえらい。

初見(恥)。だいぶ前にNHKBSで黒澤明をまとめて放映したときに録画してあったもの。
七人の侍』を見たとき「ギリシャ悲劇みたいだなあ」と思い『羅生門』を見てやっぱり「演劇的だなあ」と思ったのだけど、『用心棒』はまるでシェイクスピアのようであった。いや、教養がないからどこがとははっきり言えないのだけど、東野英治郎の酒屋の場面では常に舞台(画面)の外から聞こえてくる音との緊張関係があったりするところとか、あと西村晃加藤武の場面はなんだかローゼンクランツとギルデンスターンみたいではない?
黒澤の映画ってもしかすると思ってた以上に演劇的かもしれない。NHKでやったやつの録画はまだ山のように残っているので、ちゃんと見ないと。

ローマの休日 [DVD]

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再見。TVでやった吹替え版を録画しといたもの。ヘプバーンは池田昌子グレゴリー・ペック城達也城達也かっこいい。
タマフル」の衣裳特集で伊賀大介氏が、「ヘプバーンの心情に応じて衣裳がだんだん変化するのが見どころである」という話をしていたのでそのへん注意しながら見ていたのだけど、ヘプバーンの着ているブラウスは最初のものと腕まくりをするときのものと、違うのを使っているのね。いままで全然気がつかなかった。すごいなあ(衣裳デザインは巨匠イーディス・ヘッドである)。

アン王女「わたくしは、国家の友情を信じます。個人と個人の友情を信じて疑わないように」
ジョー「私の勤める新聞社を代表し申し上げますが、王女の信念は裏切られないと、かたくかたく信じております」
アン「その言葉を伺って、たいへんうれしく思います」

かーっ、たまらん!


マグノリア [DVD]

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初見。結構な長尺なのにだれないでほとんど一気に見てしまった。ただこれも「カリスマ」のときと同じように、初めの方で父親(クイズ番組の司会者)と口論する女性が、あとから警官の訪問をうけてデートの約束をする女性と同一人物だということがわからなかった。困ったもんである。またクライマックスでいきなり超常現象が発生するのにたまげたけど、あれは聖書に由来があるのね。教養がないとそういうこともわからなくて困る。
「fuck」が口癖の、死にかけてる大物プロデューサーの奥さんが『トゥモロー・ワールド』で殺されちゃう女の人だった(ジュリアン・ムーア)。私この人好きかも。また、トム・クルーズがこんなに芝居が巧いとは思わなかった。フィリップ・シーモア・ホフマンは最近亡くなってしまった。『ER』のモーゲンスタン部長がダメ男を演じていてちょっと不思議。
ただ個々の役者さんやそのエピソードよりも、エイミー・マンの歌のほうが印象が強いのはどうしようもないことなのでしょうか(貶しているわけではない)。終盤主要な登場人物が別々の場所で"Wise Up"を歌う場面はそこらへんのへんなミュージカルよりもミュージカル的だと思う。
黒人の少年が警官にラップを歌ってみせて「わかってくれない」とかボヤくけど、あれどういう意味だったんだろう?

【初回生産限定】雨に唄えば 製作60周年記念リマスター版 [Blu-ray]

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再見。ただ昔何十回も見たのはTVの吹替え版だったので、ジーン・ケリーデビー・レイノルズが英語をしゃべってるのは新鮮。あらためてあの吹替えは傑作だったなあと思う。リナの向井真理子とかスタジオの社長の中村正とかね。

船曳建夫『右であれ左であれ、わが祖国日本』を読んで日本の将来を考えるなど

新書だし、語り口もやわらかいのでふんふんとうなずきながら読み終わり、さて著者はどういう主張をしていたのかなと思い返そうとするとうまく説明できない。私の読解力が低いのか(たぶんそうだろう)実は著者がだいじなところを端折ってしまったのか(もしかするとそうかも)わからないけど、しょうがないのでメモをとりながら再読する。

目次
序 なぜ、いま「国家論」なのか
第1章 右であれ左であれ、あなたの日本
第2章 国際日本・大日本・小日本――室町から戦前までの日本の国家モデル
第3章 中国・ロシア・西洋という脅威――三つの主勢力による東アジアの地政学的環境
第4章 戦後日本の夢と現実――敗戦から第1次イラク戦争まで
第5章 右も左も傷ついた「戦後・後」の日本――冷戦終結バブル崩壊・第1次イラク戦争
第6章 戦争をしない方法、勝つ方法――集団的自衛権憲法第9条の問題
第7章 「中庸国家」という日本の針路――世界とどう向き合うか
あとがき

著者によると、

  • ・中世以降の日本には「国際日本」「大日本」「小日本」という3つの国家モデルがあった。
  • ・「国際日本」は信長の目指した日本。「天皇の否定も含みつつ、世界的な水準に準拠した、国際的な場に日本が出て行く初期的な志向」
  • ・「大日本」は秀吉のモデル。「欧米と距離を取り、そして実際に欧米列強がアジアから遠いことを利用して日本を拡張し、アジアの盟主・リーダーとなる志向性」
  • ・「小日本」は家康。「それは外国との交流をコントロールしたシステム…(中略)…そのエネルギーは、「対外進出」にではなく、田畑の開梱や生活上の工夫といった「内部開発」に向けられたのです」「その後半には人口は微増を保ち安定した日本が成立し、維持されました」(第2章)
  • ・日本は中国・ロシア・西洋という3つの勢力に囲まれているという地政学的環境にある
  • ・3つの国家モデルはそれにどう対応するか(あるいはしないか)という違いによる
  • 明治維新以降日本は「大日本」モデルを採用したが失敗した(第3章)
  • ・戦後は「国際日本」でやっていこうとしたがいろんな事情でそうもいかなかった(第4章)
  • ・冷戦が終わりバブルが弾けて「小日本」志向が復活した
  • ・国際政治の枠組みが変わり今までのようにはいかなくなった
  • ・第1次イラク戦争で莫大な支援金を拠出したのに国際的な評価がなかった→右も左も傷つく(第5章)
  • ・戦後日本はアメリカの養子みたいなもの
  • ・日米の2国間関係は国際関係ではない、日本はホントの外交ができない
  • ・冷戦が終わりアメリカも弱ってきたので日本に自立してもらいたがってる(第6章)
  • ・「国際日本」「大日本」「小日本」どれかひとつ選ぼうとしてもダメ
  • ・日本は韓国・北朝鮮とともに東アジアの「賭場の掛金」になりつつある
  • ・3つの国家モデルを使い分けて「中庸国家日本」を目指すしかない
  • ・「大日本」であり続けようと努力してこそ「小日本」を維持できる
  • ・これからの「国際日本」はヨーロッパでなく東南アジアを意識するべき(第7章)

ということらしいんですが。


保守方面の方々がよく「憲法第9条と自衛隊の矛盾を解消しなければならない」と言うけれど、戦後の日本の政治のホントのねじれはそれよりも「独立国のような顔をしていて実は重要な決定はアメリカのお許しを得なければならない」ということなんじゃないかなーとよく思う。去年中国が防空識別圏を設定したというニュースが流れたとき、日本政府は当然反発したもののアメリカの出方を伺っていたような雰囲気があって、ずいぶん頼りない印象をもったものだった(私は日々のニュースを精査してるわけではないので、こういうのは全部ただの印象にすぎないんですけど)。また以前「年次改革要望書」ていうのが話題になったりもした。

年末に安倍首相が靖国神社に参拝して各国からいろいろ言われている件、自民党の人はどういう決着にもっていくつもりなのか知る由もないけれど、もし「アメリカさんがどうおっしゃろうが私たちはこれで行きます」という主張を貫くつもりならば、それはそれでアリなんじゃないかと実は思っている。ただもしそうなれば当然向こうは「そっちがそうならこっちにも考えがあるぞ」的な態度に出るわけで、その先どうする、どうなるという見通しなりプランがあるんだろうか(あんまりあるようには思えない)。

船曳先生の言うとおり、戦後日本はアメリカの養子の立場でいることでめんどくさい国際関係から免除されていたわけで、もしその立場を捨てて親離れするつもりならアメリカ以外の国々と個別の関係をむすんでいかなくてはならない。だとしたらわざわざ靖国なんていう厄介な件をいま荒立てる必要があったのか。集団的自衛権を認める方に持っていきたいのなら(中・韓はともかく)まずASEAN諸国に懇切丁寧に「いやぜったい心配いらないから」ということを説得して回らなきゃいけないので、そのときに靖国問題なんてジャマにしかならないはずなのだ。もし安倍さんの参拝の理由が、ほんとに国内の支持者の人気取りだけなのだったとしたら、頭わるいにもホドがあると思うんだけど。

ついでに、保守方面のみなさんがよく仰る今ひとつ「自虐史観」云々についてですが、自分はアレは「次やるときに失敗しないために」有用なんじゃないかと思っている(誤解を招きやすい言いかただな)。ドイツ人が日本人にむかって「今度はイタリア抜きでやろうな」って言うというジョークがあるけれど、ドイツと組むかどうかはともかく、歴史的なめぐり合わせやら日本の置かれたのっぴきならない事情があったにせよ当時の日本が結果的に失敗してしまったのは紛れもない事実なわけで、あの時日本にどういう選択肢があったのか、万が一ああいう状況に再びおちいったときにどうすればより良い結末を迎えることができるのか、きちんと考えておくのは絶対に必要なことである。そう思うと、ただ「あのときはしょうがなかったんだ」「他の国もわるいんだ」「日本人は立派だったんだ」ばっかり言ってる(ようにしか見えない)保守派の皆さんの好きな「国民の歴史」とやらはただの女々しい泣き言(この表現はフェミニズム的にヒジョーに問題ですが)でしかないんじゃないでしょうか。

というわけで今は『昭和史 1926-1945』と『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読んでいるのですが、読めば読むほどどーすんねんコレという感じですわなあ昭和初期。

右であれ左であれ、わが祖国日本 (PHP新書)

右であれ左であれ、わが祖国日本 (PHP新書)

ことし見たTVドラマ

あまちゃん
はげしく今更ですけども。
無職の期間とだいたい重なっていたので、ほぼ全話をリアルタイムで見ることができました。NHKの朝ドラは『凛々と』から『ひらり』までをなんだかわりと熱心に見ていて(たぶん出勤時間の都合)、その後ブランクがあって『おひさま』の途中からあらためて視聴習慣ができたという感じ。ドラマってずっと見てると愛着がでてきてあんまり悪く言いたくなくなるものだけど、『カーネーション』がちょっとまれに見る傑作だったせいで*1その後の『梅ちゃん先生』『純と愛』には落胆したものでした。いまやってる『ごちそうさん』もそうだけど、やっぱりなんだかんだ言ってTVドラマって脚本が9割なんじゃないでしょうか。それもとくに高等な技術が必要とかいうわけではなく、脚本家が登場人物のキャラクターによりそって、自然にお話をすすめてくれるだけでよいのです。なのに主人公の純真無垢さをムリに強調するからただのワガママになってしまったり、「朝ドラを壊す」とか妙なこと言い出すから収集がつかなくなったりするんだと思う。
あまちゃん』そのものについてはもうさんざん言われつくされているので二点だけ。このドラマが作者が時間を操作し情報を完全にコントロールする形で、いわば推理小説のようなスタイルで語られているということ。もうひとつ、回収されなかった伏線としてのアキの「たすけてストーブさん、おら東京なんか行きたくねえ!」(第68回)という台詞。


半沢直樹
これも今更ですな。
2ch等で素直に「面白い」と言えない人たちが「TBSはこの時期ほんとは『ぴんとこな』の方を推していたがそっちがコケて、あまり期待していなかった「半沢」が当たった」「上が無能だからヒットしたのに延長できなかった」とかデマをとばしていたけど、んなわけないよなあ。普通に「日曜劇場」だし初回は2時間スペシャルだったしウケたからあと5回作るとかできるわけないじゃんね。
第1回で半沢が本店に呼ばれたとき上司役に小須田康人が出てて、この人の芝居変わんないなーと思った。


リーガル・ハイ』『リーガルハイ』
第2シーズンの方はナカグロなしとかわかりにくいわ。
第1シーズンのオンエアのときは見てなかったのだけど、終盤の長台詞の評判が高かったので某所にてまとめて視聴。第8話の子役の子(吉田里琴)の巧さが舌を巻くなど。

*1:おもわずNHKドラマガイド買っちゃったくらい

ことし見た映画

基本的にhuluやTV放映でだけ見ているので旧作ばっか。劇場ずーっと行ってない……。


バットマンビギンズ』
 2月?……内容あんまり覚えてない……おもしろかったような気がする……ケン・ワタナベの出番がもうちょっとあったらよかった……マイケル・ケインがかっこよかった……そのくらい……
 huluはこれを配信したのなら続篇も責任もってやってほしい。あとガメラの『レギオン襲来』と『イリス覚醒』も。


スラムドッグ・ミリオネア
 2月。TBSでやっていたのをたまたま見つけておもしろかったので最後まで見てしまい、その後huluであらためて確認。再見するくらいおもしろかった、というわけではなく最近のTVの洋画劇場ってものすごいカットをする(クレジットタイトルをバッサリなくしたりとか)のでなんか安心できないのである。
 前半、登場人物の台詞が現地語(ヒンディー語?)でずっと字幕で通したり画面の色使いが極端だったり、大胆な監督さんだなーと思った。


マトリックス』3部作
 3月? 『マトリックス』は昔TVで見た。『リローデッド』『レボリューションズ』は初見。
 この世界観はマトリックスとリアルを行ったり来たりするのがおもしろいので、リアルの方でずっとドンパチやってばかりの展開になるとやっぱりどうもつまらん。



ウルトラマンサーガ』
 3月? 宇多丸さんがラジオでほめてたので見た。たしかにDAIGOの「たすけてウルトラマン!」という台詞は、ちょっと尋常じゃない緊張感があってすごかった。
 ただ「侵略された地球」の描写がもうすこしあってほしいなあと思う。秋元才加さんはカッコよかったです。


『CURE』
 4月。すげえ怖かった。わざと怖くなく演出してるのでよけい怖い。でんでんの巡査が同僚を淡々と射殺するところがいちばん怖かった。すごい。役所広司三谷幸喜作品に出ているときよりよほど魅力的。
 ネットでこの映画の感想をいろいろ探して読んでいたら、「役所広司がバスで移動する場面以降はぜんぶ役所の妄想ではないか」という解釈をしてるブログがあって、たぶん間違ってるけどおもしろいと思った。


踊る大捜査線THE MOVIE湾岸署史上最悪の日』
 4月。以前TV放映を見ようとして挫折したのを覚えている。今回は最後まで見た。
 ……ラストがだらだらと長い。「天国と地獄」とか台詞で言わんでいい。そのくらい。


トゥモロー・ワールド
 7月。すごい。傑作。主人公のもと奥さんが殺される場面の長回しがすごい。メイキングの動画をYouTubeで見たんだけど、車内を撮影するために車の屋根をとってカメラを装着するように改造されてるんですが、このショットの終わりでカメラは車外に出て走り去る車を見送ってるのよね。どうやって撮ったんだろう。CGで消したとか? そんなことできるの?
 マイケル・ケインが(自分の中で)『バットマンビギンズ』につづいてカッコいい。例によってネット上の評判を探して読んでいたら、少なくない人が『SF赤ちゃんよ永遠に』に言及していた。うんうんそうだよね。


バイオハザード』『バイオハザードII アポカリプス
 7月。ゲームは知らないけど楽しく見ました。Iではミラ・ジョヴォヴィッチの、IIでは婦人警官の人の衣裳が示すように、「もともとそのつもりがないのに戦闘に巻き込まれて仕方なく戦う」というシチュエーションが魅力である。だからIIでミラさんが準備万端ととのえてやる気全開で出てくるとちょっと萎え。
 あとはIのレーザートラップのシーンがやっぱり印象的。IIIはまだ見てません。

 
はやぶさ/HAYABUSA
 8月。評判はあんまりよくなかったみたいだけど、それほどでもなく面白く見ました。西田敏行佐野史郎が抑えた芝居をしていてよい。ほかの役者さんも見習ってほしかった。竹内結子が広報担当としてはやぶさの絵本の制作をするところからはやぶさのモノローグにスムーズにつなげればよかったんじゃないかなーと思う。あと竹内結子は架空の人物なのにその死んだ兄弟がどうとかキャリアがこうとかいう話はいらん。


インビジブル
 9月。まえにTVで見た。ケヴィン・ベーコンがゲスくてよい。ていうか透明になると性格は下衆になるのだろうか。


ニキータ
 9月。これも再見。好きな映画。ホテルからの狙撃のシーンは、もっとわんわん泣きながら撃つという印象があったんだけど実はそれほど泣いてなくて意外だった。劇場公開時の「泣き虫の殺し屋」というキャッチにひっぱられたのかしらん。


ツレがうつになりまして。
 9月。まあまあおもしろかった。堺雅人の演技が自然で巧い。ただこれも『はやぶさ』とおなじで、「宮崎あおいの実家の知り合いがうつで自殺した」なんていうフィクションを挿入する必要があったのか。


金融腐蝕列島 呪縛』
 10月。TVの『半沢直樹』がおもしろかったので、そういうビジネスものを探していて、はじめ『ハゲタカ』を見たのだけれど、冒頭の台詞のわざとらしさにひっかかってしまって見続けることができなかった。それで次にこれを見たわけである。
 お話そのものもそれなりにおもしろかったのだが、なかに役者が即興で作ったとしか思えないすごくリアルな台詞の場面があって驚愕をした。これについては稿を改めます。
 「半沢」だといちばん偉いのは頭取だったけど、この映画では頭取なんか下っ端でその上の顧問とか最高顧問というのが悪役になるのである。最高顧問の仲代達矢がいかにも悪くて怖い。


ハッピーフライト
 11月。再見。傑作。すばらしい。見てて「仕事する」ってこういう感じだよね―としみじみする。


『オータム・イン・ニューヨーク』
 11月。初見。秋のニューヨークの風景とウィノナ・ライダーがたいへん美しかった。リチャード・ギアは最初のデートでいきなりやっちゃっちゃいけないと思った。『ER』のスーザンが出てました。


アウトブレイク
 11月。再見。宿主のサルがみごとに演技してるのがすごい。ダスティン・ホフマンは普通に上手いんだけど、「なんでこんな映画に出てるんだ」という違和感が最後まで残るんだよね。


グラン・トリノ
 11月。初見。すばらしかった。あとから調べるとイーストウッドはこれを最後の出演にするつもりだったそうで、成程という感じである。クライマックスの手前で服を仕立てる場面があって「?」と思ったのが種明かしされるところとか!


『パプリカ』
 12月。今敏監督のものを見るのは初めて。これについても別に書きます。


 半年ちかく無職で時間はあったのだけど、なんだか申し訳なくてとてもTV映画三昧というわけにはいかなかったのだ。来年はもうちょっと見ようと思う(こればっか)。

.ことし読んだ本

年末なので、ことし読んだ本やら映画やらをまとめてみようと思ってリストアップしてみたらまあ少ないこと。一応言い訳しておくと、読もうと思って手を出した本は山のようにあるのです。でも途中で面倒になったり関心が別のところに移ってしまったり時間切れになったりで、読了したのが極端に少ないというわけ。また以前読んだ本を再読したのも入れてありません。


マンガの遺伝子 (講談社現代新書)
 1月に図書館から借りてきてるんだけど、覚えてない…(呆)。

火の山ー山猿記(上) (講談社文庫) 火の山ー山猿記(下) (講談社文庫)
 5月。朝ドラ『純情きらり』がらみ。
 →6/5 『火の山―山猿記』についての覚書
 →6/6 いまさらですが『純情きらり』

ファッションフード、あります。: はやりの食べ物クロニクル1970-2010
 6月。
 →6/22 図書館で借りた本2冊

困ってるひと
 6月。
 →6/22 図書館で借りた本2冊

きょうも料理―お料理番組と主婦 葛藤の歴史
 7月。
 →7/20 山尾美香『きょうも料理』を読む

それでも、自転車に乗りますか?(祥伝社新書261)
自転車の安全鉄則 (朝日新書)
 7月。なんのきっかけでこの2冊を手にとったのか忘れてしまった。前者には自転車が加害者となった場合の実例が示されていてヒジョーに参考になる。入っていた自転車保険をアップグレードして家族までカバーするようにしました。後者はおなじみ疋田智節。あるTV番組にたいするdisがおもしろかったです*1

オレたちバブル入行組 (文春文庫)
 8月。ヨメさんが「『半沢直樹』の展開が気になる」と言って買ってきたのを借りて読んだ。原作の半沢はTVよりもだいぶワイルドな感じである(堺雅人は優等生すぎる印象)。続刊は未読。
 あちこちで言われてることだけど、池井戸潤はタイトルのセンスがなさすぎでもったいない。

アメリカ政治の現場から (文春新書)
 12月。huluで"The West Wing"をずっと見ていて興味が出てきたので読んだ本。シカゴ大学大学院を出てアメリカの議員スタッフになった日本人の話。冒頭で基礎知識として語られるアメリカの大学〜就職事情が興味深い。こういうのを参考にして日本の硬直した就職制度をどうにかしないと埋もれているはずの有用な人材がえらいもったいないと、素人は思うんだけどなあ(女性の人材についても同様)。「正規のルートを選択しない人間はめんどくさいからイヤ」ってことなんだろうけど。
 →12/7 「保守」と「リベラル」(渡辺将人『アメリカ政治の現場から』より)

大統領たちのアメリカ―指導者たちの現代史 (丸善ライブラリー)
 12月。トルーマンがこんな偉い人だとは知らなかった。写真を見たらちょっと徳井優さんに似てる(何)。
 →12/8 ハリー・トルーマンの話(宮本倫好『大統領たちのアメリカ』より)

パプリカ (新潮文庫)
 12月。huluで今敏監督の映画『パプリカ』を見たので。映画とだいぶ印象がちがう。



まあそれにしてもやっぱり少ないことに変わりはないので、来年はもうちょっとちゃんと本を読む人になりたいなあと思いました(小並感←流行語)。